岩波新書<br> 自由民権運動〈デモクラシー〉の夢と挫折

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岩波新書
自由民権運動〈デモクラシー〉の夢と挫折

  • 著者名:松沢裕作
  • 価格 ¥902(本体¥820)
  • 岩波書店(2016/12発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004316091

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内容説明

維新後,各地で生まれた民権結社.それは〈デモクラシー〉に夢を託した人びとの砦であった.新しい社会を自らの手で築く.その理想はなぜ挫折に終わったのか.旧来の秩序が解体してゆくなかで,生き残る道を模索する明治の民衆たち.苦闘の足跡が,いまの日本社会と重なって見えてくる.

目次

目  次
   はじめに

 第一章 戊辰戦後デモクラシー
  一 戦場での出会い
   二人の人物/慶応四年・三春藩
  二 それぞれの戊辰戦後
   河野広中の藩政改革運動/板垣退助の凱旋/家格への執着/ 「人民平均」
  三 暴力の担い手たち
    「破落戸」の軍隊/尾張藩草莽隊
  四 近世身分制社会とその解体
   身分制社会とはなにか/やぶれた「袋」/改革の時代/征韓論政変/板垣の危機感/戊辰戦後デモクラシー
 第二章 建白と結社
  一 民撰議院設立建白書の衝撃
   民撰議院設立建白書の提出/民撰議院論争/自由民権運動の出発
  二 わりこむ運動
   結社という「袋」/士族の結社──立志社/河野広中と結社/区長、戸長たちと結社──七名社/愛国社の設立/大阪会議と通諭書事件/西南戦争と「わりこむ運動」の挫折
 第三章 「私立国会」への道
  一 ひろがる結社
   愛国社の再興/筑前共愛会/蚕糸業と結社──群馬/村と結社──越前/都市知識人の結社──交詢社/演説会と新聞の結社──嚶鳴社/演説会/撃剣会/ 「参加=解放」型幻想──愛国交親社/新しい社会の模索
  二 国会開設運動から私立国会へ
   国会開設請願をめぐる対立/国会期成同盟第一回大会/集会条例/国会開設願望書の受付拒否/ 「私立国会」か請願か/二つの対立軸/政党結成をめぐる対立/政党結成へ/私擬憲法/植木枝盛の憲法案/大日本帝国憲法との相違点/宙に浮く私立国会と私擬憲法
 第四章 与えられた舞台
  一 転機としての明治一四年
   明治一四年の政変/政府内の憲法構想/開拓使官有物払下げ問題/自由党の結成
  二 府県会という舞台
   地方三新法/土佐州会/立憲改進党と府県会
  三 福島事件
   福島事件とは/県会の開会/議案毎号否決/会津三方道路/喜多方事件/福島自由党の動向/事件の構図
  四 迷走する自由党
   板垣洋行問題/偽党撲滅
 第五章 暴力のゆくえ
  一 激化事件
   武装蜂起に向かう民権家たち/秋田事件/ 「参加=解放」型幻想と私立国会論の共鳴/急進的活動家たちの登場/加波山事件/民権家と博徒
  二 自由党の解党
   一〇万円募金計画/ 「武」を否定できない党指導部/解党へ
  三 秩父事件
   発端/蜂起/鎮圧/負債農民騒擾としての秩父事件/ 「天朝様」への敵対
 終 章 自由民権運動の終焉
   自分たちの手で/朝鮮へ/星亨/憲法を待ちつづけて
   おわりに
   文献解題

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬参仟縁

45
1874年、民撰議院設立の建白書の提出で、自由民権運動始まる(ⅰ頁)。建白:人びとが政府に意見を述べ政策提案をおこなうこと(39頁)。ということは、現代のNGOが政策提言(アドボカシー)しているのと同じか? 建白書の主張は、身分制社会解体後、統治の正統性は社会の構成員個人の政治参加で支える原理(41頁)。近世社会の解体から生まれ、戊辰戦争に規定され、近世社会の多様な考え方が存在した視点から捉えた(ⅲ頁~)。軍役:武士の主君に対する軍事力の提供義務(18頁)。2017/03/19

おさむ

41
どちらかというと明るく肯定的な捉え方が多い自由民権運動の負の側面を描いています。江戸時代の秩序が壊れる中、この運動を通じて地位の回復を図った士族もいたり、地位の向上を図る農民たちもいた。ポスト身分制社会を模索する運動だったんですね。戦争の後には必ずデモクラシーの動きが強まる。自由民権運動の場合は戊辰戦争後のデモクラシーだった。活躍した者たちが相応の地位を得られなかった恨みが運動の原動力という指摘はとても腑に落ちます。まさに運動とは異議申し立て。その後の大正、戦後のデモクラシーのさきがけと言えますね。2017/11/15

skunk_c

20
自由民権運動を戊辰戦争によって生み出された「ポスト身分社会」における、それまでの身分・社会体制から「はみだした」人たちによる、新しい社会体制造りと捉えている。したがって、板垣退助のような戊辰戦争の英雄(彼は最後までその立場で運動にかかわっていたとか)から、末は博徒まで、様々な人が様々な思いでかかわる。それは決してきれい事ではなく、詐欺まがいの組織拡大や強盗事件まで引き起こす。でもそうしたことを丹念に描くことで、この運動を立体的に捉えていると思う。それにしても板垣の振るまい、高い理想と節操のなさが際立つ。2016/07/04

Toska

18
『近代日本と軍部』でも序盤の重要な参考文献として再々その名が挙げられていた一冊。通説とはまた違った意味で、この運動の持つ重要性が理解できた。人々が身分や共同体に縛られ/守られていた近世→それらの条件が失われた近代への転換という社会状況が丹念に描かれているため、その前景として自由民権運動が鮮やかに浮かび上がってくる。時代が変わる、とはこういうことなのだ。丁寧な文献解題も良。2023/07/02

軍縮地球市民shinshin

16
自由民権運動研究が盛んになったのは1960・70年代。学生運動が一世を風靡した時代だ。日本にフランス革命のような市民革命は起こらなかったのか、という問いにその萌芽として自由民権運動を担ぎだしたのが、東京経済大学教授色川大吉である。彼は小田実と親しかったのではないかな。1884年に発生した旧自由党過激派の武力蜂起「秩父事件」は革命未遂の「壮挙」として喧伝された。しかし、研究が進むにつれて秩父事件は江戸期の百姓一揆と変わらない実態がどんどん指摘されて、その虚構が暴かれてしまった。本書は今日の虚構が削がれた自由2020/06/12

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