内容説明
ある時は、心理学者の下宿する家で発見された開かれた窓と金魚鉢から恐るべき事態を推察し、高名な化石研究者の“消失”の背景に隠された異様な真相を看破する。またある時は不吉なシンボルで飾り立てられた家の宴の13人目の客となってしまい……平穏な風景のなかに覗く微かな異和感から奇妙な謎を見出し、逆説と諧謔に満ちた探偵術で解き明かす、画家にして詩人であるガブリエル・ゲイルの活躍を描く8編の探偵譚を収録する。チェスタトンの真骨頂ともいうべき幻想ミステリの傑作を、新訳決定版にて贈る。/解説=鳥飼否宇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
112
★★★★★ チェスタトンの著作ではブラウン神父シリーズが有名だが、この『詩人と狂人たち』こそが最高傑作だと思っている。 画家であり詩人でもあるガブリエル・ゲイルが物事を逆さまに見て、隠された真実を読み取っていくという短編集だが、第一編と最後が繋がっていてエンディングを余韻に溢れたものにしてくれる。 狂人の心を読み取るところにゲイルの特徴があり、結果として事件を未然に防いだりもするので、ミステリとは少し違うかもしれない。 全編お勧めだが、中でも『黄色い鳥』と『ガブリエル・ゲイルの犯罪』が特に好き。2019/11/24
藤月はな(灯れ松明の火)
90
G,K,チェスタトンの毒っ気の効いたユーモアと明確すぎる論理が冴え渡る短編集、復刊。この本、ずっと、読みたかったけど、どの図書館にも所蔵されていなくて泣く泣く、諦めた本だったのよね~!狂人は確固たる信念と論理を持って行動している。その狂人の論理を見抜けるのは狂人だけだ。探偵役で詩人のガブリエルも狂人なので、本当に真実か分からないのが味噌。特に「鱶の影」での「無実で囚われた人を助けるにはどうすればいいんか」という浮上した問題への回答が酷すぎて顔を青ざめつつもニヤけるしかないという不思議な状態に陥りました。2016/12/27
星落秋風五丈原
44
詩人画家のガブリエル・ゲイルの正気がどこまで、狂気がどこまで、と書かれていることをそのまま受け取ると頭が混乱してきます。2016/12/24
阿部義彦
39
これは本当に凄かった。あのブラウン神父シリーズで知られる、G・K・チェスタトン晩年の作品。ここでの探偵役は画家兼詩人のガブリエル・ゲイルです。突然逆立ちをして呟く「この世界は上下逆さまなのです。僕らはみんな上下逆さまなのです。」相変わらずエキセントリックな切れ者(と言うよりこの小説ではキチガイ一歩手前)ぶりで通りすがりの謎を解決します。ブラウン神父よりもある意味不親切に要所要所だけをぶつ切りの様に見せて、かなりの飛躍もありますが、それこそが作者がこの短編集(全8話)で狙ったダイナミズムでも有ります。濃厚!2017/05/10
masabi
29
【要旨】詩人・画家・探偵なガブリエル・ゲイルの逆説的な推理が披露される。【感想】わけもわからず手探りで進むと突然に事件が一応の解決を迎える。「ヴァリス」とはまた違った狂気分がある。自分で探偵たらんとするのではなく、他人が論理を見落とすものでも見方を変えることで解決するのを何となく示す。2017/05/05