内容説明
執筆上のうっかり話、明治の文学者の貧乏ぶりから死刑執行方法、はては「一握の牌」という歌つくりまで、妄想はばたく長編エッセイ(表題作)ほか、旅、食べ物、読書をテーマに、著者の万華鏡のような魅力があふれるエッセイ集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ribes triste
12
いいタイトルだなぁ、と思う。読書ノートと表題作の一連の随筆が面白い。風太郎氏の作家評が読めたのが嬉しい。様々な逸話をつなげていくのが、本当に上手いのです。作家のケアレスミスの話は読んでいて、笑ってしまいます。「崇る」と「祟る」、違いに気づくのに数分要しました。情けない。2016/08/30
Katsuto Yoshinaga
4
言いたい放題である。旅エッセイでは、「(古都や古墳に対して)消えて惜しいようなものが日本にそれほどあるか」「鄙びたなんて、ウス汚いの言い換えだ」等々を宣われ、食エッセイでは、「好きなものは、主菜10品、副菜10品、汁物10品程度で、ウィスキーに合うものを食す」と宣われている。実に愉快痛快である。読書や麻雀、別荘暮らしの身辺雑記なんかは、真摯であり奥ゆかしく、妙にとらえどころがない。これもまた、山風先生の魅力だろう。定期的に刊行されていた本シリーズも終了のようで、なんだか寂しい…2016/10/10
法水
4
「小説推理」に1年間連載された表題作(風山房は蓼科にあった著者の山荘の名前)の他、旅や食事、読書に関する文章を集めたエッセイ集。「T・K・K」と題された一篇はDAI語を先取りしたかの趣で最後のオチも含めて大笑い。「T・K・K」が何の略であるかはぜひ本書で確かめられたい。麻雀に熱中していた著者が石川啄木のパロディで作った「一握の牌」も面白い。「試運転中の夢の超特急ひかり」に推理作家仲間と乗る機会があったというのも貴重な証言。オリンピックの準備が間に合うのかという話も出てきて、今とシンクロする。2016/09/22
でろり~ん
1
むっふっふ、と面白く読みました。昭和ですねえ。しかし、早い頃の海外旅行をハワイばっかりじゃなく、いろんな所へ出かけているようで、それが意外な感じでした。まあね、勝手に著者と忍者とおんなじイメージで捉えているからなんでしょうけれど、ちっともお忍びじゃないし。尤も、お忍びだったらこうして書きゃしないでしょうけれどね。いっぱい書いてくれた人でしたが、気が付くと、そうですね、もう二十年経っているわけで、この本とは関係のないところで妙にしんみりしてしまいました。カバーの写真。?と思ったら、なるほど、蒔なんですね。2020/04/13
hirokazu
1
単行本2008年。文庫2016年。山田作品に「太陽黒点」(1963)というのがあって、1967年に再刊されて以降絶版となっていた。しかし作者自身の評価はAランクだったし、日下三蔵氏も「内容紹介不能の超異色作」というので、読みたいと思ってた所に、1998年廣済堂文庫として刊行され、喜んで購入したのだが・・・ひどかった。作品の内容ではない。編集者はこの作品が推理小説であることが理解できなかったらしく、ラストで明らかになるトリックを、カバーと帯とでネタばらししていたのだ。まあ、その点は置くとして、なんで(続く)2019/08/14