内容説明
「松栄亭」の洋風かきあげ(夏目漱石)、「銀座キャンドル」のチキンバスケット(川端康成)、「米久」の牛鍋(高村光太郎)、「慶楽」のカキ油牛肉焼そば(吉行淳之介)、「武蔵」の武蔵二刀流(吉村昭)──和食・洋食・中華からお好み焼き・居酒屋まで。文と食の達人厳選、使える名店22。ミシュランの三つ星にも負けない、名物料理の数々をオールカラーで徹底ガイド。『文士の舌』改題。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
32
日本の文豪達はどのような所で食事していたか、の大変ゆかいなエッセイ。それぞれ皆こだわりの美味しそうなところばかりであるが(当然不二家やデニーズは出てこない)間に挟み込まれたちょっとした話が面白い。吉田健一がホテルのロビーで父親(茂)と話していたがそれが英語であった事。川端康成は親戚の間を転々として、正月には友人と所に行くしかなかった。成功したのちも正月に運転手付きの車でやってきて「おにぎり食わせろ」とやってきたと言う。山口瞳が小説の舞台にした国立市の掘っ建て小屋みたいな焼き鳥屋。どれも鋭くて秀悦な文章。2017/08/18
浅香山三郎
22
新潮文庫の嵐山さんの文人・文士と食、悪妻などを題材にしたシリーズ。『文人悪食』『文人暴食』『文人悪妻』『追悼の達人』に続いて料理店を取り上げる。文士との関係に依らずとも名店だつた店、文士との関わりから名店になつた店、料理と店、文士と作品との交錯を嵐山さんが絶妙に塩梅してまことに無駄のない味はひである。あとがきにあるやうに、単行本に載せた店の幾つかは既に閉店したといふ。京都の知人に聞くと、本書の水上勉行きつけの店もまうないのだといふ。文学も店も儚いものだと思ふ。2019/11/22
たぬ
20
☆4.5 気に入りのシリーズ。食の描写が鮮やかだとその本自体の魅力もアップする…本当そうだよねえ。今回もおいしそうな料理写真多数。永井荷風の「アリゾナ」と坂口安吾の「染太郎」に特に惹かれた(どちらも浅草)。食べてみたいな~お店はまだあるのかな。初読かと思いきや7年半くらい前に読んでた。2022/10/02
mymtskd
17
「文人悪食」シリーズの番外編といった内容で、本書では料理がカラーで掲載されている。漱石、鴎外から向田邦子、開高健まで近現代の作家が通った「名店」を紹介している。各作家にまつわるエピソードはこれまで通り面白いが、料理の写真がエピソードに合っていないものも多く(作家とは関係のないその店の名物料理など)、そのあたりの粗さが気になった。2021/07/27
nyanlay
16
まさに文士がたくさん出てきて、読み応えありました。作家たちの時代は多少異なるが、それぞれが独自の食に対する意識が垣間見れて、面白かった。行ってみたいお店がたくさん。あとがきにもありましたが、早く行かなくてはと思います。2015/12/09