内容説明
西暦1571年、スペイン王フェリペ二世率いる西欧連合艦隊は、無敵トルコをついに破った。コンスタンティノープルの攻略から118年にして、トルコの地中海世界制覇の野望は潰えたのだ。しかし同時に、この戦いを契機に、海洋国家ヴェネツィアにも、歴史の主要舞台だった地中海にも、落日の陽が差し始めようとしていた――。文明の交代期に生きた男たちを壮大に描く三部作、ここに完結!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
285
再読。前作の『ロードス島攻防記』は、登場するのが男たちばかりだったせいか、やや殺伐とした印象が残った。ところが、今度のこの『レパントの海戦』では、作者に余裕があるのか、バルバリーゴを軸に、フローラとその息子を登場させるなど、小説としてのふくらみを持たせたものになっている。そして、このことはまた老いたる猛将ヴェニエルをきわだたせる効果を生み、他の登場人物も含め、造形がより立体的なものになった。 しかし、シニカルなことに、レパントの勝利はヴェネツィアの、そして地中海世界全体の黄昏を告げるものでもあった。2012/05/16
KAZOO
122
海戦三部作の最後ということを改めて認識しました。昔は出版順に読んでいたのであまり違和感がなかったのですが、今回はコンスタンティノープルが最後になりそうです。ここでフェリペⅡ世が活躍するわけですね。西洋連合の艦隊を率いてトルコの圧勝するわけです。ただそのために今までの独壇場であったヴェネチィアに翳りが見えてくるという皮肉もあります。塩野さんはこう見てくると結構戦いが好きなのですね。2015/07/27
molysk
87
1571年、ヴェネツィアやスペインなどの神聖同盟の艦隊が、オスマン帝国の艦隊を破ったレパントの海戦。かつて地中海貿易の繁栄を謳歌した都市国家ヴェネツィアは、東地中海沿岸に領土を広げていた大陸国家オスマン帝国に、その立場を脅かされつつあった。教皇の名の下に結集したカトリック世界が、異教徒を撃ち払ったレパントの海戦は、あるいはヴェネツィアの最後の光芒だったのかもしれない。東インド航路や新大陸貿易の発展で、地中海は世界の中心から外れていく。地中海の盟主であった海洋国家ヴェネツィアも、落日を迎えようとしていた。2023/02/12
財布にジャック
76
「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」そして三部作の最後を飾るこの作品、どれも傑作で甲乙付けがたいです。ただ、この作品は参謀長バルバリーゴにスポットをあてて、恋愛物仕立てにしてあるところが女性ファンとしては嬉しい限りです。西欧連合艦隊対無敵トルコの戦い、キリスト教対イスラム教の聖戦、ガレー船同士で闘われた最大で最後の海戦とこの戦いは意義のあるものなんですが・・・しかし、この後地中海世界が歴史の主役ではなくなってしまうことを思うと、歴史の残酷さを感じました。2010/12/12
future4227
74
地中海海戦三部作の最終巻。ベネツィア共和国とスペインを主力とするキリスト教連合艦隊VSトルコ艦隊のガレー船同士のガチンコ大海戦。『村上海賊の娘』を彷彿とさせる海戦シーン。この戦いの中に『ドン・キホーテ』を書いたセルバンテスもいたらしい。トラファルガー海戦は知ってたけど、レパントは知らなかった。世界史勉強してないからなぁ。この十四年後に天正遣欧少年使節団がベネツィアを訪れたと聞いてやっと歴史が繋がった。ベネツィア艦隊参謀のバルバリーゴとフローラとの禁断の恋が美しくも切ない物語として花を添えている。2023/05/22