内容説明
モリーは14歳、思いのままに物語を紡ぐことのできる天性の語り手だ。弟のキップとふたり、故郷のアイルランドから海を渡って命からがらイングランドに辿り着いた。大変な苦労の末にようやく雇ってくれるところをみつけたものの、そこで彼らを待っていたのは、巨木に取り込まれたかのような奇妙な屋敷と、青白い顔をした主人一家、そして夜中に屋敷を歩き回る不気味な男……夜の庭師だった。だが、それだけではなく、この屋敷には恐ろしい秘密が隠されていたのだ。カナダ図書館協会児童図書賞受賞。ディズニー映画化決定の傑作ゴーストストーリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
98
幼い姉弟が暗い森に分け入っていく・・昔話のエッセンスがちりばめられたファンタジー。欲張りは悲惨な目に合うのが定石だけど、欲張るのも仕方ないなと思わせるのが現代的。ハンデを背負った弟キップの高潔さが救いだ。そしてなぜか花咲かじいさんを思い出した。じいさんが咲かせた桜のように、モリーの赤い髪が輝く生命の象徴に思えた。2018/03/12
nuit@積読消化中
97
ディズニーが映画化するというのも納得の良質なゴーストストーリー、そして孤児のモリーとキップの成長物語!著者が9年かけて仕上げただけあって、非の打ち所がない内容と飽きさせない展開。普段、あまりファンタジーは読みませんが、幽霊モノと聞いて手に取り、あっという間に物語に引きこまれてしまいました。お陰で登場人物たちとシンクロしてか?連日悪夢にうなされるというほどのめり込んで読ませていただきました!2017/04/11
びす男
86
「お話は人々が現実と向きあう力をもたらしてくれる。嘘は顔を背けて逃げるように仕向けるんだ」。嘘の力を利用する、恐ろしい巨木に翻弄される人々の物語。いやー、こわい。これは本当に児童文学なのか、というほどスリルがある。逃げたい現実や恐怖に立ち向かうことは大人にだって難しい。都合のいい嘘まみれの誘惑を断った主人公の姉弟の勇気は見上げたもので、後半は葛藤を乗り越えた二人の活躍から目が離せなかった。2017/03/05
藤月はな(灯れ松明の火)
73
影絵の御伽噺のようなファンシーな表紙に対し、中身は中々、ヘヴィーなゴシック・ホラー。アイルランドのジャガイモ飢饉で親を失い、アイルランド人への差別が蔓延るイングランドへやってきたモリーとキップ姉弟。彼らが雇われた屋敷は財を齎す代わりに幸せを損ねる大木とその下僕である「夜の庭師」に憑かれていた・・・。ちょっとした欲が叶うと人は引き返せなくなってしまうリアルさが恐ろしい。そして親が亡くなったことをキップに必死に隠していたモリーやキップの心情も分かる分、切ない。後、物語と嘘の根本的な違いには頷くばかりです。2017/01/18
星落秋風五丈原
73
貧しいアイルランドの子供達が不思議な家にやってきて、やがて屋敷に潜む魔物と対峙していくファンタジー。物語と嘘の違いについて語るシーンがいい。2016/12/19