内容説明
『砂の器』『飢餓海峡』に匹敵する平成の社会派ミステリの一大傑作、登場!
仕事中に大骨折した日読テレビのディレクター広川英樹は、リハビリの苦しさと恋人を失った寂しさから一人暮らしの自宅に風俗嬢リョウを呼んだ。単なるサービスを超えた彼女の優しさに広川は恋愛感情を持ってしまう。リョウが去った部屋には「建築家・加賀雄二郎」の名前と住所が記した紙片が落ちていた。ほどなくして報道される加賀の殺害事件。死因は正体不明の毒物による中毒死だった。広川はリョウの犯行を疑い、再び連絡を取ろうと試みるが、すでにリョウは風俗店を辞め沖縄に飛んでいた。そして、すぐさま起こる東京白金台の児童公園での四人の子供の毒殺事件。続いて今度は大阪の公園でも三人の子供と一人の親が殺害された。どれも同じ毒物による無差別大量殺人だった。犯人はリョウなのか? 彼女はどこにいるのか? そして動機は? リョウの怒濤の告白で疾駆する慟哭と驚愕のラストシーン!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
🐾Yoko Omoto🐾
145
あるデリヘル嬢にひとかたならぬ思い入れを抱く主人公が、彼女の謎の失踪と連続毒殺事件の関連性を憂ううちに、戦中から現在に至るまでの沖縄の壮絶な真実を知っていくことになる。沖縄のことをもっと知るべきだという作者の思いが伝わるノンフィクションさながらのストーリーは、考えさせられる部分が非常に多かった。だが、戦争に限らず様々な出来事で他者からの理不尽を被り苦しむ人は、沖縄・本土の別なく存在すると思う。そう考えると、沖縄の暗部をこれでもかと集約したような犯人の境遇は、余りにも極端に設定し過ぎという印象も。➡(続)2017/07/02
ゆみねこ
77
若一光司さん、初読み。ガツンと心に響きました。沖縄の現実と隠されてきた悲劇。毒殺魔はリョウなのか?真犯人が明かされ、最後にあかされたリョウの秘密。リョウが心を安定させるには、どうしても必要なことだったのでしょうね。本土の都合だけで沖縄に様々なものを押しつけてはいけない、目を背けてはならないと思いました。 2017/02/08
Satomi
65
「毒殺魔」タイトル借り。毒での無差別殺人鬼の話を期待していた私はなんと単純なんだろう…。がっつり社会派、過去から現在まで続く沖縄の米軍基地をはじめとする諸々の社会問題がテーマでした。作者の沖縄へ対する強い意志が感じられます。思うところは色々あるけれど、デリケートなテーマなだけに感想は難しい。2017/07/24
ren5000
35
題名からして毒殺犯を追うエンタメ小説かと思いきや沖縄の暗部にスポットをあてた重いヘビーな小説でした。前半の導入部がダラダラ長すぎて挫けそうになりながらそれを抜けるとほぼほぼ一気読み。読後の感想としては今の沖縄の基地問題なんかで左巻き勢力の気持ち悪さを感じてる小生としてはあまり共感できなかった。うーん、毒殺犯と沖縄問題は切り離して書いたほうがよかったんじゃないかなぁ。2017/05/10
さっこ
29
表題とカバー画から重い不穏なミステリーと想像して読み始めたのですが、軽めな感じの流れでちょっと違和感が起きました。さらにミステリーというより、沖縄の米軍基地やそれに絡んだ沖縄の人たちの苦悩などを描いていた社会派小説でしたので、ミステリーを期待して読んだ分、入り込めずに終わってしまいました。ただ無差別に子供達を殺した作中の犯人に同情することも難しいし、基地問題等に何かを問うには、少し伝わりづらい作品だったかも…。2019/01/28