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内容説明
創立60周年を迎えるにあたって神戸新聞社は、兵庫県出身で82歳の柳田國男に回顧談を求めた。柳田はこれを快諾、25回にわたって聞き書きがおこなわれ、200回にわたる連載記事「故郷七十年」に結実した。一回の談話は3時間、長いときで5時間に及んだという。本書は近代日本の知識人の自己形成の物語、明治文学史の重要な一部、民俗学の誕生を語るもの。数ある自伝、回顧録のなかの白眉を文庫本でお届けする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
28
民族学者と高名な著者。晩年の聞き書きをまとめた作品で話題はあちこちに飛び、ラジオ朗読だったこともありで集中できなかった。島崎藤村や田山花袋と親しかった由、彼らの名作の意外な裏事実が明らかになったりが興味深い。他にも、筆者と我が町の因縁や、親戚付き合いの約束事等、パーツ・パーツで耳をそばだてることがあったので、チャンスがあれば書籍で再読して見たい。(NHKラジオ「朗読」全25回にて)2021/10/15
ばんだねいっぺい
27
実におもしろく興味深い一冊。柳田さんの目で見る世界が民俗学になったんだと理解できる。沖縄のユタの話など、いろいろとそうかという話が満載だ。2024/04/22
gtn
17
回顧談。生い立ち、人物評等、興味深い。一点、民俗学の鼻祖といえども、宗教観にはやや乏しかった様子。おそらくだが、民話や伝説を宗教とは捉えていない。自身、民俗学によるアプローチが絶対と信じていること自体が、宗教であることにも気付いていない。2024/12/15
イリエ
12
前半、明治大正時代の記述から文化の側面を知れて面白い。だが、次第に好々爺が自慢話&上から目線で攻めてくる印象。いや、本当に偉大な人なんだけど、そこは民族学から攻めてほしかった。赤飯を食べるのは、古代の稲作文化を尊重するためというのは面白い。だけど、田山花袋の「蒲団」にダメ出ししてやったぜとか、芥川龍之介の「河童」も私がいたから書けたような言い方、なんだかなぁ。2017/10/27
roughfractus02
8
本書は死の前年(1961年)、著者が神戸新聞で語り書きした回顧談を一冊に収める。兵庫に生まれ茨城・千葉へ移住する幼少年期、大卒で農政官僚として日本各地を回り、国際連盟委員として国外に赴く日々。さらに仕事を辞して沖縄に向かい、『郷土研究』を創刊し、民俗学を立ち上げて全国の研究者と調査を続ける日々・・・それらトピックが晩年まで豊富に描かれる。『遠野物語』に関する記述や官僚時代の出世の挫折の記述はなぜかないが、著者の官僚、文壇、研究者間のネットワーク力は人間間を超え、隣の祠や沖縄のユタを通じて異界へも伸びる。2025/02/27