内容説明
孔子の生きた時代(前551?‐前479)、世は戦乱にあけくれ、殺戮と陰謀にみちていた。そのような状況下、孔子は、人間にとって重要なのは相互に愛情をもつことだとして「仁」の思想を唱え、政治はその実践であるとした『論語』を生みだす。その後『論語』は儒教の教典として崇拝され、文学的香気にあふれた含蓄深い名句の数々は、人間讃歌、人類永遠の古典として、現代に至るまで多くの人々に読みつがれている。本書は、表題作ほか、孔子と『論語』に関する初心者向けの論考六篇で構成。中国文学最高権威の著者が、人間孔子の精神と『論語』の思想を明らかにした入門書の名著。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パフちゃん@かのん変更
5
1976.1.6
壱萬参仟縁
2
愛情の最高の表現は政治にある(048ページ)。このことを政治家はどれだけわかっているのか。選挙が近いが、市民への愛情がなくして、原発事故のことをまだ先の話だとかいえるだろうか。現在進行形の話であり、現場に行って作業員と一緒に作業して被爆してからなら能天気なことは言えないだろう。学問をすることによって、人間ははじめて人間である(062ページ)。読書が人間をつくると換言できよう。読書による教養と、仁としての政治(154ページ)。政治家は誰のために政治をするのか。苦しむ有権者をさらに追い込んでは政治愛はない。2012/12/03
はひへほ
0
孔子とその流れの理解の足掛かりに。2014/06/07
杞人
0
以前に宿を借りた知人の弔問にて、馬車の馬を香典にせよと言う孔子に対して、弟子の子貢は(門人の葬儀に比べて)鄭重過ぎるのではありませんかと抗議する。孔子は答えて、「わしはさっき涙が出て仕方が無かった。わしは自分の涙を嘘にはしたくないのだ」と(『礼記』檀弓上)。おそらく説話で史実ではないのだが、孔子先生が格好良過ぎますw2012/04/16
しずかな午後
0
『論語』に見られる人間への信頼は、戦乱つづきの時代に生み出された。そこに『論語』の偉さがある。孔子は、「仁」(愛情の道徳を実行する意志)を道徳の中心にすえ、それで民を治めることを目指し、書物による学問や音楽といった文化を道徳に不可欠であるとした。吉川氏はこの文化主義に注目する。孔子は「詩書礼楽」を重視した。「詩」によって感情の面白さを「楽」によって調和の美しさを知る。また、弟子たち、とくに子路との交流が面白い。世間に失望していっそ筏で海に出ようかと言う孔子に、子路は「之れを聞きて喜ぶ」。孔子は苦笑する。2020/08/14