内容説明
官界をきらい、野にあって酒を愛し、自由を謳った陶淵明。伝説に彩られ、日本でもファンの多い大詩人だが、著者は「淵明のこころのゆたかさが、かえってにが手」と語り、また「矛盾を矛盾のままに表白しているのが、淵明の文学」と書く。野心に満ちた乱世、意に染まぬ仕官、挫折、帰郷。平坦ではない人生において、淵明は何を表現したのか。本書はこの稀代の詩人と正対し、主要作品の味読を通して、平静な言葉の裏にひしめきかげろう複雑で濃厚なものに眼を凝らし、その文学世界と生涯に迫る。「閑情の賦」「陶淵明詩の訓話」「燃焼と持続」の関連論考3篇を併録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロビン
5
吉川先生による陶淵明解説本。陶淵明の人生と作品を並行して紹介されていて読みやすい。杜甫より陶淵明のほうが詩文が平易で読みやすい印象だったが、吉川先生は、言葉の奥にある感情や含意を読み取る必要があるゆえに杜甫より陶淵明のほうが難しい、と書かれていてぎゃふんとなった。血なまぐさい騒擾の時代にあって心身の孤塁を守る陶淵明の生き方はモンテーニュを思い起こさせるものがあるが、モンテーニュのほうが割り切りがよく、人生を享楽しているだろう。陶淵明は痛みや憂いを終生抱き続けたし、それを正直に表現した。慕わしい人である。2019/04/05
GEO(ジオ)
5
中国文学の「超」がつくほどの大家として知られる吉川幸次郎氏による、陶淵明論。 個人的に面白かったのは、最後の陶淵明の「読山海経」の詩について。さすがの陶淵明先生も形天さんのあの凛々しいお姿は脳裏に焼きついてしまったのだろうかwwwwww2017/01/20
しんすけ
3
歸去來兮辭は日本人とって人口に膾炙した作品である。また、歸去來兮辭の作者である陶淵明の名も、同様に人口に膾炙している。そんな想いで本書を読んでみた。しかし「伝」と言っていいのだろうか。歴史学者でも伝紀作家でもなく中国古典文学者である吉川幸次郎が書いた陶淵明への思い入れの書である。『わたしの陶淵明伝』と題したほうが、納得いく作品になっている。あくまでも、陶淵明の作品に深く踏み込んだ後に、時代背景が語られる仕組みになっている。したがって歸去來兮辭も、政治に絶望した人間の作品ではなく、2015/06/20
大道寺
3
陶淵明の詩と人生。老荘思想を生きた人として気になって本書を読んだ。陶淵明は前半生を軍閥の幕僚として生き、後半生を故郷で詩を詠みながら農夫として過ごした。世俗に嫌気がさして田舎に隠遁してからは彼は酒を飲み詩を詠み気楽に生きたと言えるだろうか? 著者の吉川は必ずしもそうではないと言う。陶淵明はその身を世間から隠しながらも、東晋が滅ぼされ宋が建国される様を見続け、政治への思いを詩にぶつけることもあったのではなかったか。(1/2)2012/09/08
しょ~や
0
陶淵明と言えば隠遁生活くらいに思ってましたが、なかなか苦悩もあったようで。もう少し私が漢詩を楽しめる素養があればもっと楽しく読めたでしょう。無念。2017/08/19
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