内容説明
すずは広島の江波で生まれた絵が得意な少女。昭和19年、18歳で呉に嫁いだすずは、戦争が世の中の空気を変えていく中、ひとりの主婦として前を向いて生きていく。だが、戦争は進み、呉はたびたび空襲に見舞われる。そして昭和20年の夏がやってきた――。数々の漫画賞を受賞した原作コミック、待望の劇場アニメ化。戦時下の広島・呉を生きるすずの日常と軌跡を描く物語、ノベライズ版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
186
原作を繰返し読み、先週映画版を観ました。そしてノベライズ版を読了。やはり、原作で感動したところは、ノベライズ版でも感動。そして何より、周作とリンの関係や、広島で戦災孤児になり北條家に迎えられた少女の名前がわかるなど、原作と映画版を上手く補足しています。原爆投下の翌日に広島へ救援に行った知多さん達が二次被爆により、原爆症の症状が出ている事もはっきりする。毎日の平穏な営みを戦火が強引に奪い取る。それでも、亡くした人達の笑顔の、記憶の、容れ物として、残された人々は懸命に生きる。多くの人に読まれて欲しい作品です。2016/12/04
海猫
167
映画を見たおさらいをかねて。ところどころ絵や音響など、ないものねだりをしたくなる瞬間があるが概ねよく書けたノベライズ。2016/12/20
いつでも母さん
139
嗚呼、この国には沢山の『すず』が居たのだ。美晴やリンやすみ、そしてヨーコも・・今、想像の翼を広げなくても、すずが居た世界を思い描くことは出来る。それは決して忘れてはいけない世界だ。周作とすずの夫婦があれから何十年も共に暮らして「大ごとじゃった」と懐かしむにはあまりにも失ったものが、人が多すぎるのを私は知っている。だが「笑うて思い出してあげよ」というすずの想いが私に圧し掛かる。それは何処にでも宿る切れ切れの愛が、生活の中で続いていくんだと云う事なのだね。ねぇ・・2017/02/10
ヘタ
116
特別不幸でもなく、特別恵まれているわけでもない、どこにでもいそうな登場人物に感情移入しやすい。『夕凪の街 桜の国』も同様でした。私のようなデブ、ではなくて、おっちゃんから、若い人まで共感できるのだろうと思います。あの戦争を、こうやって一般性/抽象度を高めてうまく伝えていると思いましたヨ。2017/12/02
ケンイチミズバ
113
絵が上手なすずさんがリンさんにスイカやアイスクリームの絵を描いて遊郭までもってきたシーンは優しさに溢れてる。そしてリンの借金を肩代わりしようとした周作さん、周作とリンの関係を妄想して落ち着かないすず、すずを好きだった幼馴染の哲。哲は巡洋艦に乗り組んでいて次はもういつ会えるかもわからない。夫なのにすずと哲を気遣う周作。切なくて切なくて。優しさ、人の心の美しさ、人々の普通の生活の頭上にあれが訪れみんなぐちゃぐちゃにしてしまった。この人は死なせないでと思いながら読んでいた。晴美ちゃんが消滅した時は衝撃が走った。2016/11/18
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