内容説明
勘定方の青年・印南新六は、生涯をかけて守ると誓った女性・吉乃のため、刺客として藩の騒動に巻き込まれてゆく──。互いに想いを交わしながらも別々の道を選ぶことしかできなかった男女の運命を描く、傑作長編時代小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
94
生涯を賭けて一人の想い女を守り切った武士の切なく哀しい純愛時代小説。小倉藩士の印南新六は、生涯を賭けて守ると誓った吉乃のため、意に染まぬ責任を背負い藩内抗争「白黒騒動」に巻き込まれ、思わぬ形で短い生涯を閉じる。武家社会で、想い人の幸福をだけを願い、見返りを求めず全身全霊で初心を貫き通す男の強さと幸せに憧れすらをを感じる。吉乃の立場に立つと、切なさや哀しさ残るが、これ以上の幸せはないのではないか。 2023/04/20
yuki**
12
「天から降る穢れなき雪も地に落ちれば泥になります 。されど、落ちるまでの美しさはひとの心を慰めます」吉乃を守るためにとった行動は夫になる機会を失う原因となってしまった。生涯お守りすると約束した新六はそれでもその言葉を守り通す。困難な時には助けてくれる、側にいてくれると吉乃の心の支えにおのずとなっていた新六の存在に甘えてしまう吉乃。新六はそれが役目とばかりに自ら汚れ役を買ってでる。寡黙な男、新六が最後に発した最後の台詞に、想いを貫く意思の強さが滲み出ている。2018/07/21
ラスカル
10
人との交わりが苦手で認めてもらえない印南新六は、親戚筋にあたる吉乃をひそかに思っていた。が、御前試合で重役の息子に怪我をさせたことで江戸詰になり、戻って来た時には吉乃には縁談が決まっていた。やがて藩を二分する争いが起こり、吉乃の夫菅源太郎の窮地を、幾度となく新六が救ってくれた。吉乃が悲しむのを防ぐためだった。政争の山場で二人は思いを告げ合うが、新六は武士としての筋目を通して自刃して果てた。 みんなに見下げられ、利用されるばかりの新六の一途な思いが美しく切ない。2019/09/29
カリン
9
とある小藩の騒動に恋愛を絡めて描いたものだが、主人公の吉乃には少しも共感できなかった。2018/04/17
大阪のきんちゃん2
7
こういう、秘めた恋、報われない愛、を感情を高ぶらせず淡々と描く葉室麟氏の小説がとても気に入っています。 恋愛感情において自分を犠牲にする選択をするのは中々理解しづらいかも知れませんが、現代でも様々な事情で引き裂かれてしまうことはあるのかなあと・・・ 理不尽な上司に振り回されたり、立場によって「正義」がまるで違ったりってありますよねえ、そういうの。 それにしても、こんなヒロインみたいな女性に関わるのは、難儀やなあ!? 感想がブレてしまいました、良かったんですけど。2019/02/13
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