内容説明
こんなにも身近なところに、古典の世界が息づいている。私たちの人生そのままに、かつて、生きて戦い愛した人々がいる。――「古事記」「萬葉集」から若山牧水まで、民族の遺産として私たちに残されたおびただしい古典の中から、著者が長年いつくしんできた作品の数々を、女性ならではのこまやかな眼と、平明な文章で紹介し、味わい深い古典の世界へと招待してくれる名エッセイ集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
115
つくづく古典文学が好きなのだなと思わされました。様々な作品への想いが詰まっています。慈しむように語るおせいさんの姿が目の前に浮かんでくるようでした。情熱とときめきが伝わってきて、古典文学を読みたいという気になります。古典文学を専攻していたので、昔は結構読んでいたのですが、最近はあまり読まなくなってきたので、これをきっかけにまた手を出そうかなと。2017/04/07
naoっぴ
83
田辺聖子さんの古典愛あふれるエッセイ。古典文学は私にとって馴染みの薄い未知のジャンルでしたが、なんと優美で風情豊かなのだろうと、内に込められた芸術性にも感心しながら読みました。男女の機微やお洒落心は今も昔も変わりはなく、短い歌に込められた想いの深さに、わくわくしたり切なくなったり。もっと若い頃に知っていればと思ったけれど、和歌に込められた恋しい気持ちなんてオクテ学生だった私にはチンプンカンプンだっただろうな。きっと今だから良さがわかるのだろう。「伊勢物語」「落窪物語」「徒然草」など気になります。2019/06/24
獺祭魚の食客@鯨鯢
74
「私の古典散歩」と副題の付けられた本書は私の古典探索の羅針盤になってくれそうです。六十余りあるエッセイは和歌を織り混ぜてその心情を読み解いてくれます。 「年上の女」という作品では、田辺さんは和泉式部の年下の恋人への歌「捨てはせんと 思ふさへこそ悲しけれ 君に馴れにしわが身と思へば」が一番好きだと書いていました。 イギリスやフランスの女性と異なり平安時代の大胆な行動は、田辺さん自信の生き方と重なる部分があったのではないかと思えます。2020/03/07
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
41
田辺聖子さんが愛する古典文学紹介エッセイ。『更科日記』を紹介した「少女と物語」が本好きとしてはたまりません。1000年前の人も、読みたい本を手に入れた時のうれしさ、それを時間の許す限り読み続け、夜になっても寝る直前まで読まずにはいられないという気持ちを持っていたのだと思うと、平安時代の人も身近に感じられる。この本の中で紹介されている古典文学、原文では無理なので訳されたもので読んでみたい。2015/09/09
HMax
39
古典の楽しさを教えてくれる名著。1000年以上前の先祖の物語りを自国の言葉で読める国は世界でも稀、そんな昔の物語りを今まであまり読んでこなかったことを残念に思います。それでも平家物語や方丈記の一部を受験勉強として暗記はしました。今の高校生はどうなのでしょうか?ずっと続けて欲しいです。2025/04/19