内容説明
砂漠の砂は語りはじめる。失われた大地の声を、人間の歌を、そして「生」の愉悦と希望を――21世紀の鬼才芸術家がおくる、熊本地震を挟んで執筆された書きおろし長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
波多野七月
16
さらさらと、両手から砂がすべり落ちていくように。膨大なテキストとともに、この世界に埋め尽くされていく。鳥になり風になり石ころになり、ただ存在としてそこにある。ここにいるのに、ここにはいない。おそらくきっと、大多数の読者にとっては難解かもしれない。話の筋は掴みにくく、視点もめざましく変わっていく。まるで誰かの頭の中を無理やり覗き込んだ時のように、目眩にも似た感覚に陥ってゆく。やがて理解することを手放して、この物語の中へと飛び込んだ。自分自身の輪郭がぼやけてしまうような物語に、巡り会ってしまった事に驚愕する。2016/11/28
もも
14
つかみどころのない物語で、最後まで読んでも私には全貌が把握できませんでした。1ページ1ページ文字がぎっしり詰まっています。読むのには時間が要りましたが、不快感は全くありませんでした。視点もたくさん変わりますが、それも結構好きで……。つかみどころがないからこそ面白かったと、私はそう思いました。砂が語るのも不思議で好きです。でも、理解できたら良いなというのも本当の気持ちなので、また読みたいと思います。読んでいて不思議な感覚を味わうことができました。2017/03/18
Bartleby
12
これは小説かといえば紛れもなく小説だが語り手は絶えず姿を変える砂粒(たち)で、何をもの語っているのかはよく分からないがとにかく、この作品のもつ強度のすごさだけは確かだ。誰にも真似できない。楽しく読むものではなく時に苦行にすら感じられる。通読には向いていないかもしれない、ランダムにページを開いたところから読み始めたほうがむしろ、本作のすごさが分かると思う。2023/01/10
袖崎いたる
12
読者は文学作品にひとつの秩序を読み〈取れ/込め〉ないとき、作者か読者かの力量不足かセンス不持に悩む。この作品はどうか。簡単だが、難解だ。思い出されるのは「失敗していることを度外視すれば成功」という云い。固有名詞なき一般名詞にて織られていてリテラルに読めるが、直示的な語用をしていると思しき文章は、もはや見ることしか望めない。風景として。しかも見続けることに〈疲れる/憑れる〉ような。改行が全然ない文体は読みの示唆をくれてる。それと〝穴のあいた砂〟の表象。つまりこれは仮説。覚えたての言葉を使えば思弁的実在論的?2017/01/10
ksh
12
取り憑かれたような意識の濁流が言葉となって襲ってくる。それに身を任せて言葉を追っていくと体験したこともない世界に連れていかれる。一体どうやったらこんなものが書けるのだろうか。次々と意識と視点が交錯していく様を読むのは幻覚体験、変性意識体験を追体験するようだ。坂口恭平のなかの何がこんなものを書かせたのだろう。これを読むということは類希なる体験だと思う。なんなんだ、これは。2016/12/08
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