講談社文芸文庫<br> 湯川秀樹歌文集

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講談社文芸文庫
湯川秀樹歌文集

  • ISBN:9784062903257

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内容説明

日本人として初めてのノーベル賞(物理学賞)受賞者であり、反核平和運動にも積極的に関わった理論物理学者は、兄に東洋史家である貝塚茂樹、弟に中国文学者の小川環樹を持ち、自身も漢籍、古典、和歌に親しむ粋人でもあった。本書は、幼少青年期の記憶から、長年暮らした京都への愛惜、耽読した古典への思いを綴る随筆と、歌集「深山木」を収録。偉大な科学者とは別の、愛すべき横顔を伝える。

目次

少年の頃
ふるさと
古典と私
和歌について
具象以前
歌集 深山木
解説  細川光洋

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

練りようかん

10
生い立ちや家族のことなどを綴った随筆と歌集を収録。歌集目当てだったが、知らないことを知っていく過程とその派生に興味を引かれることが多く、随筆から窺える思考自体が面白かった。西行に会うために吉野に行き、空海への関心から高野山に行きたいとあるのが気質を感じさせ、また『源氏物語』を一読してわからなくても長い月日の間に何度も再挑戦、そのうち近代科学と逆だという接点を見出すようにまでなるのが、理解に瞬発力を発揮する天才タイプのイメージを覆し実はコツコツタイプだったと思えて発見。常に扉をあけてる姿勢が素晴らしい。2024/08/17

roughfractus02

5
物理学以外の文を読むと著者は一人の「人」として綴っていたように思う。ソルベー会議を終えアメリカに立ち寄る「アメリカ日記」では、内向的な著者がアインシュタインらに積極的にアポを取る一方、「大文字」では兄弟の中で一人戦死した弟滋樹(ますき)を静かに偲ぶ様が描かれる。量子論に関係論的に接近するその姿勢には、生は中継点であるという老荘や西行の東洋の死生観があるという。「和歌について」で著者は「天地は逆旅なるかも鳥も人もいづこより来ていづこにか去る」という自身の歌に、芭蕉が「百代の過客」を引用した李白の文を重ねる。2022/03/23

まっちけん

4
本読むから文系とか、数字が好きだから理系とか、そんなの最近になって作られた分類であって、元々教養ある人は、専門分野に関係なく幅広く本を読んでたのだった。湯川博士の研究のベースには西行がいて、老荘思想があるのだった。通勤の電車で源氏を読んでいたという話が本当に好き。そして趣味は和歌(短歌とは言わない)を詠むこと。破調もほとんどなくきちんと、ありのままに詠む、時には素朴すぎるほどの作風。湯川博士、知れば知るほどもっと知りたくなる人だ。2019/04/25

瀬希瑞 世季子

0
"近代科学は、どこまでも物質的存在の明確さを追求しようとする。その先にいつでも不明確なものがあることを知っていればこそ、ますます執拗に明確さを追求するのである。(…)しかし明暗のコントラストが、近代科学の世界と源氏物語的世界とでは、逆になっている。どちらが陽画でどちらが陰画かは、さておき、これ等二つの世界のどちらへも入ってゆけるということこそ、人間に生まれてきた大きな仕合せであると、私は思っている。"(p.130)2023/02/07

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