内容説明
★新しい昭和史の見方を伝える!
山川出版社の『日本史B 高校日本史』(81 山川 日B308)における戦前昭和史を、「教養」として読み直す!
実際の教科書と対比しながら、「大事なのに触れられていないこと」「さらっと記述があるだけだが、実は背景にこんなことが」という解説で、歴史の本質がつかめる!
「そんなに簡単に平和な世の中から戦争の時代へとシフトするのだろうか?」といった疑問。それは、個々の事実をつなぐ様々な出来事が教科書では端折られてしまっているから。本書では、そうした隙間を埋め、かつ簡素な記述の裏にある今日的な意味に光を当てながら昭和史を振り返る。
・戦前昭和の歴史を学ぶことに今日的な意味が見出せない、そんな人こそ目からウロコの内容
・いま以上に先行きが不透明な時代に、先人はどのように行動し、それがどのような結果をもたらしたのか?
・二大政党制の機能不全ないし限界についても、戦前と比較して考えることができる!
・当時の国民目線になって考えるという意味で、現代を生きる私たちが戦前昭和を身近に感じられる点。それは、当時の日本も格差社会であったこと。
・当時の国民だとしたら? 新聞やラジオが戦争熱を煽っていくなかで、あなたは「それはおかしい」といえるのか。あるいは「おかしい」と発言すること自体、英雄的な、正しい行為だといえるのか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
非日常口
24
昭和史は現代日本を考える上で基礎であるが、「戦後」と気軽に使う人ほど本書を読むべきだ。二大政党の病理、治安維持法と当時の政党支持層の関係性、ロンドン軍縮会議における英米と日本の信頼関係、五一五事件と二二六事件の背景と当時の国民の受けとめ方の違い、国際連盟脱退の詳細と事実、連合国内部の複雑な利害対立と冷戦への関係性、ABCD包囲網と日支事変や援蒋ルートから大東亜へ向かう本音、抽象化されていく米開戦理由、教科書のカタイ内容を、再度敷衍し、私達が生きた歴史として使えるようになる講義がここにある。2017/01/11
樋口佳之
21
山川教科書で学んでいる現役高校生にはいいかも。/軍部支配を擁護するのではありませんが、軍部という存在は、世界的に見ても、ある時期の国家にとって近代化を進めていくための必要悪みたいなところがありました。/必要悪とは便利な言葉だな。自分は使わないと気をつけているし、この言葉使わなくても文意は通せると思う2018/03/04
hk
17
【あと4回読む本】国民経済というものを補助線として、戦前から戦中戦後までのあらましを解説している好著だ。例えば…5.15事件(犬養首相殺害など)は二大政党が拙い経済政策を連発して不景気が長期化する中で起きたため、当事者たる青年将校に対する助命嘆願運動がなされるほど軍部に対して世論は寛容並びに歓迎の姿勢を見せた。他方2.26事件は高橋是清肝いりの大規模財政出動によって景気が回復基調に乗ったところで勃発したため、「せっかく世の中が安定しつつあるのに水を差すな」と国民から不興を買った……という風に分析していく。2017/05/06
skunk_c
16
大学受験用教科書として定番の山川の詳説日本史Bをネタにしながら、昭和史について概観している。著者の専門とも言える政党の動きについてはさすがに良くまとまっているし、いわゆる「軍国主義化」で片付けられることの多い満州事変~日中戦争期についての議会の動きは分かりやすい。一方日中戦争の拡大のいきさつがあたかも自然の成り行きのように書かれていたり、北部仏印進出と南部仏印進出が区別されていなかったりするなど荒っぽい部分も散見。また、アメリカ国民が対ドイツ戦に参戦したがっていたとするがいかがなものか。2017/01/03
Hatann
6
日本史教科書を手掛かりとして行間を読み起こし、昭和戦前史の政治状況につき腹落ちのする説明を試みている。二大政党制の問題点に加えて、不幸な戦争に対する軍部・メディア・国民の関与が具体的に記述され、ソフトな語り口もあって腹落ちするところも多い。軍部のみに問題があったものではないという意見についても分からなくはないが、もう少し引用元や分析材料が示してほしいとは思った。二大政党による満州国承認という失敗は臣民世論の読み違えを原因とすると説明されるが、どうしたらそんな大変な読み違えをするのだろうと少し疑問に思う。2019/01/05