岩波新書<br> 科学者と戦争

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岩波新書
科学者と戦争

  • 著者名:池内了
  • 価格 ¥858(本体¥780)
  • 岩波書店(2016/11発売)
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  • ISBN:9784004316114

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内容説明

軍事研究との訣別を誓ったはずの日本で,軍学共同が急速に進んでいる.悲惨な結果をもたらした歴史への反省を忘れ,科学者はいったい何を考えているのか.「科学は両義的」「戦争は発明の母」「国への協力は世界標準」などの「論理」を批判.科学者は戦争への応用に毅然として反対し,真の社会的責任を果たすべきである.

目次

目  次

 はじめに──軍学共同が急進展する日本

 第1章 科学者はなぜ軍事研究に従うのか
  1 科学者の愛国
   道を外れる科学者/戦争と科学/アルキメデスの才能/揺籃期の科学者/科学は国の力の源/組織的動員/第一次世界大戦とハーバー/第二次世界大戦とプロジェクト研究/戦時下の科学者の態度/ジェイソン組織/darpa方式
  2 日本の科学者の戦争協力
   富国強兵とお雇い外国人/研究体制の強化/戦時中の科学動員/原爆とレーダーと
  3 ナチス・ドイツの物理学者たち
   科学技術をテコに/第一次世界大戦が始まると/ 「悪法も法」である──プランク/科学至上主義──ハイゼンベルグ/日和見主義的科学主義──デバイ/三者三様の意識
 第2章 科学者の戦争放棄のその後
  1 戦後の平和路線とその躓き
   日本学術会議の決意表明/新たな戦争の影/米軍資金問題/平和路線とそれへの反論/大学改革の中で/拡大する米軍の資金援助
  2 軍と学の接近
   防衛省の技術交流事業/ 「交流」の発展/技術協定の内容/防衛省の競争的研究資金──安全保障技術研究推進制度/民生応用という建前/成果の公開──原則から可能へ/募集テーマと応募理由/採択研究テーマ/宇宙の軍事化の始まり/宇宙の軍事化の進展/海も軍事化/イノベーションのための軍学共同/革新的研究求む/軍産学複合体への道/文科省と経産省の対応
  3 防衛省の軍学共同戦略
   防衛生産・技術基盤戦略/学といかに連携するか/共同研究の進め方
  4 科学技術基本計画
    「選択と集中」の弊害/イノベーションのための科学技術?
 第3章 デュアルユース問題を考える
  1 デュアルユースとは 
   デュアルユース問題の考え方/祖国防衛のために
  2 ゆらぐ大学の研究ガイドライン
   不思議な新聞報道/ガイドラインの改訂/非公開の壁/東大総長による「フォロー」
  3 テロとデュアルユース問題
   炭疽菌とインフルエンザ・ウイルス/日本学術会議の「行動規範」/日本学術振興会の「心得」
  4 日本の科学者の意識
   研究者へのアンケート/研究者版経済的徴兵制/防衛目的なら許されるか/民生利用は口実となるか/科学至上主義/国家の要請には従うべきか/安全・安心のためのモノユース/デュアルユース問題と科学者の社会的責任
 第4章 軍事化した科学の末路
  1 科学者は単純である
   そもそも、科学者とはどのような人間なのだろうか?/研究室の外では科学的でない
  2 軍事研究の「魅力」
    「世界初」の魔力/軍からの潤沢な研究資金/軍事予算と研究の自由
  3 軍事研究の空しさ
   日陰の研究者/虚しい研究/オッペンハイマーの場合/軍事技術の限界/超兵器?
  4 軍事研究は科学を発展させるのか?
   戦争は発明の母か/戦争は必要か/スピンオフとは
 おわりに──「人格なき科学」に陥らないために
    「センター・オブ・イノベーション」/軍学共同への傾斜/軍事化を受け入れる論理/科学による破滅を避けるために/社会に責任を持つ科学者
   参考文献
   あとがき
   年 表

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

coolflat

18
「選択と集中」政策や大学交付金の削減は、多くの研究者を貧困状態に追いやり、軍事研究に手を出さざるを得なくさせている。そうであっても研究者としては表立っては軍事研究に踏み込みにくい。そこで自分の行動を正当化するための方便として使われるのが「デュアルユース」だ。基礎研究の場合、民生研究か軍事研究か判別しにくい。そういう言い訳として使われる。確かに基礎段階では判別はつかない。だが研究資金がどこから出ているのかは判別がつく。学術機関からならば民生利用、軍からならば軍事利用。後者であるなら拒否しなければならない。 2016/11/27

skunk_c

15
大学で軍事研究はやらないとしてきた戦後日本の科学研究がどのような圧力を受けているかを詳述。軍事研究反対の立場から研究の機密化が招く問題を指摘する。こうした本書の立場には賛成だし、著者の考えにも同感なのだが、読んでいて違和感を感じた。日本は確かに平和憲法の下「戦争の放棄」を掲げているが、一方で米軍に基地を提供し、世界有数の軍事力である自衛隊を持つ矛盾。でも科学者はこの現実から自動的に距離を置ける存在としているような印象を受けた。平和主義が正しいという理念が先行し、現実の矛盾に向き合っていない気がするのだ。2017/03/04

ジコボー

11
「戦争は発明の母」なのか? 本質は、必要に駆られての発明「必要が発明の母」。 軍事化を受け入れる大きな論理は「悪法も法である」という形式論理と「科学の発展のため」というすり替えの論理。 軍事共同が急速に進んでいる現在の日本において、軍事と技術開発について書かれた本書。 科学者の人間性について描かれている点が印象に残りました。人間性は知識の偏りもあり多少ズレており、交渉に弱く、律儀で恩義に熱い。オーバーフィッティングな思考で権威に弱い。なるほどなと感じました。2020/02/03

おっくー

9
衝動買いした本。科学者視点の本であり、戦争との関わり方について書かれた私的感情を強く感じる本。日本が軍事的な研究を行わないことが稀有で賞賛しているが、他の国については科学者との歴史を学ぶに止めるのみであり、結論は海外は対岸の火事で、日本での軍事研究はありえない。科学の進歩は戦争のお陰ではない。潤沢な資金、統合的な科学者の連携となっている。とのこと。読んでて、作者を疑う発言が多かった。2017/07/03

バカボンのパパ

8
★★☆☆☆タイトルに興味を持ち、拝読。「デュアルユース」というキーワードが頻繁に使われてましたね。軍事にも民生にも転用可能な最新テクノロジーである。嫌ですね。科学は平和目的、福祉目的で使われて欲しいものです。とんちんかんですか?拝読中、嫌悪感を感じていました。2016/09/22

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