内容説明
深夜、覆面をして、酒に酔った侍に喧嘩をしかけては、髷を切ったり川に投げ込んだりして楽しんでいる男装の女剣士。それは、十六歳の時、浪人者に犯されそうになり、家来を殺された堀真琴の、九年後の姿であった。真琴は、敵討ちを心に誓って剣術の稽古に励んだ結果、剣を使うことが面白くて仕方なくなったのだが……。女剣士の成長の様を、絶妙の筋立てで描く長編時代小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nemuro
55
年末にNHK BSプレミアムで放送の「池波正太郎生誕100年BS特集時代劇」(主演・石橋静河)を録画して新年に観たら面白かった。本棚にあった未読の原作本を早速読み始めてみた。ふむふむ。ドラマ化に際し様々なアレンジもあるが大筋は堅持。原作もドラマも申し分ない。すっかり馴染みな作家のつもりだが既読本は案外少なくて『ル・パスタン』(2018年4月読了)、『あほうがらす』(2018年12月読了)の2冊のみ。『剣客商売』とか『鬼平犯科帳』とか、テレビではよく観ていたのだが。本棚にはエッセイを中心に更に7冊が待機中。2023/01/10
優希
52
エッセイかと思っていたら女性剣士の成長物語なんですね。仇討ちを誓っていたはずが、剣を使うことに快楽をおぼえるようになる姿は武士と重なるものがあります。絶妙な物語展開で読ませる作品だなと。面白かったです。2023/02/17
GaGa
49
著者晩年の作だと聞くが、これがなかなか面白い。一言で言えば少女コミック。リボンの騎士時代劇版。中でも、主人公が一人隠れて春画を見て興奮するというところはなかなか笑えた(その先に発展も解決もなかったけれど)「このような女は抱きたくない」は場外ホームランな一言。コミック感覚で楽しめる池波作品ということで貴重な一冊かもしれない。2013/07/01
タツ フカガワ
27
大身旗本の姪、真琴は16歳のとき2人組の浪人に犯されそうになるところを老剣客に助けられる。9年後、真琴は男装の剣士となっていた。書名の「まんぞく まんぞく」は波瀾万丈の物語がすべて終わったとき真琴が呟く言葉で、相変わらずの池波節に一気読みでした。時代は田沼老中のころで、『剣客商売』シリーズの佐々木三冬とちょっと重なるところもありました。2019/04/20
nagatori(ちゅり)。
27
さらりと読めました。池波さんにはいつも食エッセイでお世話になっているので、この本でも何気なしに食べ物が気になり…真琴の食べっぷりや、あっぱれ。あのお蕎麦屋さん、行ってみたいなあ。これを機会に他の池波作品にも手を出してみようか、な。2015/05/23