内容説明
信州松代藩――五代目・真田信安のもと、政治の実権を握り放縦な生活に走った原八郎五郎を倒し、窮乏の極にある藩の財政改革に尽力した恩田木工を描く表題作。関ケ原の戦い以来、父昌幸、弟幸村と敵対する宿命を担った真田信幸の生き方を探る『信濃大名記』。ほかに直木賞受賞作『錯乱』など、大河小説『真田太平記』の先駆を成し、著者の小説世界の本質を示す“真田もの”5編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
279
拙い私の読書遍歴の中で確実に上位に据える歴史ものの真田太平記!真田太平記は私の中で歴史物上位に確実に入るほどの傑作。本作は真田一族の魂というか心持ちというか、戦国から徳川時代を息つく者たちのストーリー。真田太平記を読んでから挑めばベストだが、未読でも充分楽しめる短編集。その時代を生きるギリギリの息吹!上役の顔色を伺って生きるか、本質を見極め貧窮に陥るとも真田魂を貫くか。『驕れる者は久しからず、盛者必衰の理を表す』自身の欲に溺れる者、他者の幸せを思う者、真田大編を未読でも大いに楽しめる傑作時代物です‼️🙇2019/11/07
優希
103
面白かったです。直木賞受賞作を含める中・短編集でした。所謂「真田もの」と言われる作品ばかりで信州松代藩の家臣としての真田家が描かれているのが興味深いです。家康の時代に入って太平の世になってからの真田は家老としての孤独な戦いの中にあったのが伝わって来ました。『真田太平記』の原典であり、続編でもある作品。時代こそ違えど、真田の歴史を見ているようです。今年は大河も真田ということもあり、真田関係の本を読みたいと思っていますが、その手始めにいい一冊でした。2016/02/24
レアル
76
真田家に纏わる短編集。著者の「真田太平記」を思い出しながら読んだが、特に印象深かったのが信幸以降の松代における話。真田三代以降あまり知らなかったのでいい勉強になったのを加え、戦国後徳川幕府というモノが置かれ、其々の治める国をこの幕府が統括する!というシステムに変わるにあたり、この統括される側の大名そして庶民の暮らしぶりの変化。これを読み改めて戦国と比べてその差異が興味深い。著者の描く人物と人間ドラマは本当にカッコいい。2016/10/05
KAZOO
70
むかし真田太平記を読んだ覚えがあるのですが詳細は忘れてしまっていて、この本を読み若干思い出すことができました。恩田木工については山本七平さんの「日本人とユダヤ人」の中で「日暮硯」という本が紹介されていて、その藩政改革者の名前で覚えていました。この本ではそこら辺のやり取りが、時代劇になりそうな感じで書かれていて興味を惹かれました。2015/04/09
財布にジャック
70
真田と言えば昌幸・信幸・幸村を思い浮かべてしまいますが、その後、それもだいぶ先の真田家のお話というのを初めて読みました。表題作の「真田騒動」とその中編と同じ時代を描く短編の「この父その子」は大変興味深く面白かったです。オマケに50年以上も前に池波さんが直木賞をとられた受賞作の「錯乱」まで入っていて、テンションが上がりっぱなしでした!2011/11/06