内容説明
21世紀、高度な思考を持つようになったコンピュータにより、私たちの空の旅は大きく変わりつつある。軽やかに世界を駆け巡る若き女性研究者の奮闘を通して、未来の航空管制の姿を描く!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
85
パリ、アムステルダムの研究所、シリコンバレーにあるNASAエイムズ研究所で将来の航空輸送や航空交通管理システムの研究開発に従事してきた著者のエッセイ。一般書として軽めに書いているものの、残念ながら空の旅を楽しむ紀行文ではない。航空管制科学の世界とその研究者生活が主な内容で、グローバル化する社会にあって、国境や組織を超え、世界に知的価値を生み出そうとする日本人研究者(現在、東大准教授)の奮闘ぶりを見せてくれる。これから研究者として世界に羽ばたこうと考えている人には参考になるだろう。2021/08/13
みっちー
24
B777やB787にあるように、日本の航空機産業は主要構造材やその他部品等のハード的部分は強くて、「日本の誇れる技術」なんて勝手に思ってたけど、やっぱりそれだけじゃ、航空機は飛ばなくて。。。本書のテーマである航空管制学を含めてソフトの部分も凄く大事で、システム全体を考えたら航空機産業は奥が深いし、世界の秀才達が貪欲に研究を重ねている事に、自分の航空機好きがいかにお子ちゃまかを思い知らされたf^_^;著者のバイタリティーに感服しましたm(_ _)m2017/01/08
冬木楼 fuyukirou
21
「空の旅を科学する」とはこういう事かと納得した。飛行機に乗ったのは両手で数えるくらいしかないけど飛行場で飛行機がぞろぞろと列をなして順番に飛び立っていくし着陸も同様だったので見事だと思った。その陰に著者の関わったような航空管制の技術がある。オランダから始まりアメリカNASAに渡りどういう考え方で技術開発しているかをやさしく解説しているのだけど難しかった。本書発行の2016年は東京オリンピックを控え空港の混雑緩和が喫緊の命題だった。まさかのコロナ下で航空周辺は我慢の時、それでも開発は着々と進んでいるのだろう2022/03/31
ひろき@巨人の肩
18
航空管制科学は人間社会と技術の集合体ソシオテクノロジーの一つ。1980年代にNASAエイムズ研究所ハインツ・エルツバーガー博士が研究を始め、TMAがダラス空港のピーク時航空機到着時の効率化を実証し学問分野として開ける。全米ではTBFMと名前を変えて現在も活躍中。金融業界同様に基幹システムの抜本的改革が難しく、2025年の崖をどのように乗り越えるか?主戦場である欧米に乗り込んで、孤軍奮闘するエリ博士が同年代としてとても頼もしい。2018/05/06
pulpo8
11
横文字のシステム名は正直覚えていられなかったけど、科学者の考え方から得るものは色々あるなぁ、と思って、日常エピソードの方でテンションが上がった。「シャカリキに独創性を追い求める渋柿コース、賢く物真似をして独創性を装う甘柿コース。甘柿コースは群れをつくり、身内同士を褒め合う駄目サイクルに入る」「質問、コメントは建設的なビジョンや論理性、創造性が必要。しかし批判は他人の粗探しだけでとても簡単」。人は話を熱心に聞いてもらえると信頼感を抱く→時には「私の理解が正しいか確認させてください」と相手の話をまとめること。2018/06/03