内容説明
昭和の初め、世に言うエロ・グロ・ナンセンス時代に大量に作られ消費された、あきれるほどバカバカしいがゆえに魅惑的なエロ歌謡群は、いつしか忘却の底に沈みました。まさに日本歌謡史におけるミッシング・リンクといってよいでしょう。エロで生れてエロ育ち、私しゃ断然エロ娘……などと歌い上げたそれらを拾い上げ、つなぎあわせ、戦前の日本人が感じたエロを、その誕生から滅亡までたどってみる……。それが本書の目論見です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
71
昭和初期の歌におけるエロを紹介した一冊。エロ・グロ・ナンセンスと題されているものの、紹介されているのは基本的にエロ。昭和初期というと戦争に向かう暗い時代であったかの様なイメージを抱いてしまうが、これを読むと大正に負けず劣らず明るいものも氾濫していたのだと気付かされる。歌詞も何となく能天気で明るいものばかりだし。エロ・グロ・ナンセンスの初出の考察やエロ歌謡が軍歌に取って代わられ検閲までの道と、どこをとっても興味深い所ばかりでした。最後現代のエロ歌謡も紹介されていて、このジャンルは決して滅びない事がわかるし。2017/01/07
くさてる
25
面白かった!煽情的なタイトルですが、エロな意味でなく知的な興奮を頂きました。この本で紹介される昭和初期の歌謡界の、なんと猥雑で活気に溢れてヤンチャで面白いことか。何気なく書かれた一行にもしっかりと調査の裏付けが感じられる理知的な文章で紹介される、昭和初期の「エロ歌謡」という文化の面白さは、そのまま戦前という時代の新たなイメージをわたしに教えてくれました。大正末期~昭和初期の大衆文化に興味があるかた、モガ、モボという言葉にときめくかたには、おすすめです!2016/12/17
gtn
21
1930年代の流行語「イット」の解釈が興味深い。本来は、内面からにじみ出る色気を指していたが、やがて外見的な性的魅力へと意味が変容する。それが、時の歌謡にも反映。戦中鳴りを潜めたその"エロ"が戦後息を吹き返し、山口百恵や中森明菜のアイドル歌謡まで命脈を保ったという著者の説に共感。2022/05/27
しゅん
12
「エロ・グロ・ナンセンス」という言葉がいつ発生し広がったのか、その原点となる昭和初期の歌謡曲の状況はどのようになっていたのか。今からだと見えにくい戦前の文化状況、特にエロに関する状況を調べ上げたという点で特筆に値する。モダンガールの時代に、浅草オペラを中心に「エロ」は開花した。やがて戦争が近づくと発禁が続出して勢いを失うが、面白いのは戦後もエロは大々的に復活しなかったところ。戦争が抑圧したとは必ずしも言えず、流行の徒花として存在したエロ歌謡。この文献を読むと、「今は清潔な時代だ」という言葉も納得する。2022/01/04
Miz
8
新聞の書評に掲載されていて、手に取る。戦前戦後の歌など、時局と共にエロチシズムの変遷が描かれている。マニア受けしているものや、トンデモ楽曲など、様々なものが紹介。時折、歌手の顔写真やポスターなどもあり、ビジュアルでも楽しめた。2017/03/15