内容説明
オーラヴ・ヨハンセンは殺し屋だ。この数年間、麻薬業者のボスに命じられて殺人を引き受けてきた。今回の仕事は、不貞を働いているらしいボスの妻を始末すること。いつものように引き金をひくつもりだ。だが彼女の姿を見た瞬間、信じられないことが起こる。オーラヴは恋に落ちてしまったのだ――。葛藤する彼の銃口は誰に向かうのか。放たれた弾丸が首都の犯罪組織を大きく揺るがす……。雪降りしきる70年代のノルウェーを舞台に、世界で著作累計2800万部を突破した北欧ミステリの重鎮が描く血と愛の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
178
ノルウェー版のハードボイルド。ハードボイルドの世界に浸るためには、感情や恐怖を持たない非情さの中に、切なさを駆り立てる何かが必要なのだと、これを読んで思う。ここに出てくる男達の男心を私は分からないが、作者は女心の掴み所をよくわかっている。単語のいくつか…、その並べ方で時に一生を左右するほど美しいものを生む。ノルウェーの寒さは厳しいのね。〔国境の警備をしているのは、北極熊とマイナス40℃という気温だけだから…〕〔デンマークでは氷も雪も少ないから…〕 おすすめ。2018/10/17
Kajitt22
116
不器用で空想癖のある、王という名の殺し屋オーラブ。二人の運命の女(ファム・ファタル)はひと癖もふた癖も。凍てつく1977年の北欧のクリスマスウィーク、冒頭のチャンドラーばりの殺しの描写で引き込まれた。静謐で細やかな筆致でうっとりと読み進めると、突然ショットガンが火を噴き、大いなる血が流れる大惨事。うーん・・・。しかし最後は虚と実が交錯する終局がまた秀逸。ヴァイキングの末裔、北欧の読者には血に飢えた人々が多いのかもしれない。2018/01/05
ふう
94
物語の主人公は殺し屋。そして、物語を紡ぐのも殺し屋。北欧の長く暗い冬が舞台で、心まで凍っているかのように残酷ですが、なぜか美しいクリスマスの物語です。2017/07/15
Panzer Leader
92
「第87回海外作品読書会」180頁にも満たない小説ながら暴力・流血・愛情・憎しみ・信頼・裏切り・献身・贖罪・救済の要素がぐっと凝縮された情緒溢れる逸品。この作者の唯一読んだ「ヘッドハンターズ 」が好みでなかったが、さすが翻訳ミステリー大賞受賞作、読み応え抜群。2017/05/27
GAKU
91
70年代の雪のノルウェーが舞台。主役は三人。殺し屋のオーラヴ、ボスの若き後妻コリナ、聾啞で片足の悪い元売春婦マリア。純白の雪と真紅の血に象徴される、叙情詩のようなノワール小説。孤独な殺し屋オーラヴの愚直な生き方が胸にグサリと来た。ノワール小説なのに切ないのです。哀しいのです。久しぶりにやられた1冊!2017/03/04