内容説明
性行為の歓喜が心身の力を極限まで高め、究極の智恵をもたらすという理論を根拠に、修行に導入された「性的ヨーガ」。不正義の人が悪事を成す前に、浄土に送り届けることは救済にほかならないという思想に基づく「呪殺」。チベット密教には、いまだ秘匿された教義が数多く存在する。なぜそうした奥義がチベットで歓迎されるに至ったのか。その背景を解き明かしつつ、知られざる神秘に迫る。国や地域と時代を問わず、宗教にあまねく内在する暴力とエロティシズムの原理にまで鋭く切り込んだ一章を増補。宗教の本質を抉り出す驚異の密教入門書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
56
一人の僧侶の生涯を縦糸に、チベット密教の特質を論じた一冊。ここで主役となっている僧、チベット密教の特色とされているのが性的ヨーガと度脱つまり呪殺である。仏教のみならずあらゆる宗教に付き物の性と呪いであるが、密教ではその両者を肯定的に取り扱っているのも特徴。読んでて普通に主人公は誰それを度脱したという記述がやたら散見してるしなあ。ただ最後にチベット密教はそれを如何に乗り越えたかという事も記述されていた。密教はオカルティズムと親和性が高い事を再確認させられると共に、その部分が極めて魅力的な事も思い知らされた。2017/08/25
佐倉
14
11世紀のチベット密教僧ドルジェタクにピントを合わせチベット密教にある闇…性的ヨーガや度脱のような呪殺法のカタチを炙り出していく。今日から見て非常に過激で仏教らしからぬものに見える後期密教は意外なことにインドから生まれた。異民族の流入や東西交易の凋落によって支持基盤を失い仏教が劣勢となった時代に現世利益 や呪殺、ヒンドゥー教すら手を出していない性的な要素を取り入れて挽回を図ろうとした7世紀以降のインド仏教の要素をチベット仏教も色濃く反映しているという。2024/03/23
ホシ
10
タイトルとカバーから興味本位で読んだが、とても勉強になった。本書はまずチベット仏教を概説する。次にチベット仏教の礎となった後期密教の功罪を怪僧ドルジェタクに焦点を当てて読み解いていく。最後に、後期密教の闇を踏まえつつ、宗教が内包する暴力性をオウム事件やISのテロを引いて論じる。また暴力だけでなく、人類が宗教と性のあるべき関係について有益な解答をまだ得ていない問題も筆者は指摘する。チベット仏教や後期密教・麻原が何故「ポワ」と呼ばれる行為を行ったのか、新たな知見を得られたのが新鮮だった。2017/01/17
記憶喪失した男
6
名著。チベット仏教に詳しい。オウム真理教の裁判に識者として関わった仏教学者による本である。仏教の参考文献が豊富で助かる。2020/07/01
海星梨
5
率直に申し上げてタイトル詐欺では?という読後感。ドルジェタクの一生が私見から述べられてるだけで、ドルジェタクのために前後の密教の状況が記されておりチベット密教に対し包括的ではなく、しかも結局オウムやISの非難に終息して、ドルジェタクの言葉を妄想して終わる。密教の性と呪殺、その手法の中身への言及は一節程度しかなく、成功した呪殺で実際に何が起こったかの推察も乏しく、果ては殺しを容認する宗教的思考を丁寧に追ってくれるわけでもなく、残念でした。あと普通にダライラマ6世が気になる。2019/01/27
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