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内容説明
英語・英文学教師から国民的人気作家へと転身した場所、東京市本郷区千駄木町。代表作『吾輩は猫である』や『坊っちゃん』もここで書かれた。多くの弟子にも恵まれ、嫌いな大学も辞めた、博士号も辞退した。それなのに、千駄木はイヤだ、豚臭い、そうか、それなら慈悲のために永住してやる……と。書簡、作品、明治の千駄木から描き出す素顔の漱石とは。文庫のために「千駄木以後の漱石」を加筆。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
64
街を基軸に、氏と作品を振り返る。嫌いだから住む千駄木?!いやいや、犬・豚・無作法・悪戯・教鞭など、言葉とは裏腹に日々を楽しむ氏の姿を随所に垣間見る。しかも狸伝説?!鴎外との対比では、氏/鴎外/子規、三つ巴の感のある相互”批評”の件。但し、鴎外主宰「めさまし草」に氏が句を投稿したり、子規句会に両者が招かれるなど、敬意をもった健全なライバル関係という感。何度目にしても笑うのは、三重吉の長文の手紙の”泥棒顛末”。(笑)なお、数々の地図の挿絵に時代の温かみが溢れ、巻末の『千駄木縁の著名人リスト』も一見の価値あり。2018/11/15
はれひめ
35
谷根千と言えば森まゆみさん。夏目漱石が嫌々英語教師をしながら「猫」等を執筆していた千駄木での四年間の暮らしを紐解く。漱石の弟子へと家族への態度の違い等面白いエピソード満載。著者が漱石をバッサバッサと斬る様は小気味良い。「月が綺麗ですね」団子坂を散歩しながら囁いてみたくなる。2016/08/06
chanvesa
21
「人間ハ食ッテ居レバソレデヨロシイノサ」(44頁)という漱石の、「十分だ」という境界線をどこに引くかという人生観に、共感と尊敬を覚える。大きな家を買わず、貸家での生活で生涯を終える。単行本あとがきに「漱石はしきりと定業五十年と言ったが、まさにそのとおりになった。医薬と栄養で日本人の平均寿命はあと三十年ほど延びたけれど、五十をすぎたらもうけものと考えた方がいいかもしれない。…菫程な小さき人に生れたし という漱石の句に心引かれる。」(319頁)は全くその通りだと思う。2024/05/19
tsu55
16
谷根千は好きなので、休日などカメラ片手に散策したりします。なので、この本に出てくる地名のなかにも「あゝあそこか」とわかるものがあり、なんとなく親しみを感じました。もっとも、漱石の時代と現代とでは、景色がまったくちがうのですけれどね。2017/04/05
もだんたいむす
7
作中で、作者が「なんで漱石は家族に優しくできないの?」と何度もボヤいているのが大変愉快でした。★★★★★2017/03/11