内容説明
なぜ競争しているのに生産性が落ちるのか。なぜ学力を上げてもリーダーが育たないのか。なぜ十分な富があるのに、貧困と格差が広がるのか。どうすれば市場原理と多様性・持続可能性が両立するのか。地域再生の現場で繰り返される対話から、「和力」という鍵概念が浮上する。「脱・競争」のまったく新しい成長戦略。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
40
現智の人とは、特定分野の現場に身を置いて行動し、掘り下げと俯瞰を繰り返した結果、確固たる智恵を確立している人(4頁)。教育の対話は、コミュニケーションを通じ相互を高めあう経験こそが、社会を維持する必須要素。福祉の対話は、認知症のホームレスにも、尊厳を認めることから経済社会基盤づくりが始まることを示す(5頁)。速水享氏は、耐久財として木材を使うだけでは林業の未来なし。消費財としての燃料需要は林業の救世主という(34頁)。財の多機能利用が市場活性化の鍵か。森林組合が黒字で、林業が苦しいのはおかしい(40頁)。2016/07/22
onasu
23
アダム・スミスは、自由競争の前提として、公正な市場で、他者に同感する能力と自己の感情や行為を他人の目で見て規制する習慣を謳っていた。 とは言っても、現況は短期の利益至上主義が溢れている。だが、そこに活路を見出だしているのが、ここで紹介される「現智の(現場での知恵を確立されている)人」たちだ。林業、漁業、地方創生…、と各々で活躍されている六名との対談。 養老先生の言うように、金とは、観念の産物という面がある。金儲けが「今だけ、金だけ、自分だけ」では、雇用や賃金へ波及がない。読むと心強くなる一冊だった。2016/05/22
警蓮社峻譽身阿
19
2016年刊。地方再生をテーマに、林業、生活保護支援、教育など社会課題とされる分野の第一線で活動する方と対話形式で語られる。ミクロの視点から現場の視点からの提言は具体的。コミュニケーション能力を具体的に分解して体系的にする手法に感動した。世の中でコミュニケーション能力と声高に言われるが、そもそもコミュニケーション能力とは何かを耳にしたことはなかった。大半の教育者や人事担当者もわかってないのでは?コミュニケーション能力を向上させるには、様々な人間がいてまとまっていないコミュニティの中に入ることが近道だ。2024/03/04
Porco
17
対談集。世の中の大事なことは、広く共有されていないんだなと感じます。2021/05/18
もえたく
11
林業、漁業、教育界など現場で掘り下げと俯瞰を繰り返し智恵を蓄えた「現智の人」6人との対話集。「針葉樹と広葉樹に優劣はない」「漁獲量が減少しているのは漁業者の乱獲のせいではない」など成る程と思わされる話が多く、特に図書館に産地直売所を入れた岩手県のオガールプラザの話が興味深かった。現智の人達の本も読んでみたくなりました。2017/01/27