内容説明
著者は少年の頃、京都の禅寺で精進料理のつくり方を教えられた。畑で育てた季節の野菜を材料にして心のこもった惣菜をつくる――本書は、そうした昔の体験をもとに、著者自らが包丁を持ち、一年にわたって様様な料理を工夫してみせた、貴重なクッキング・ブックである。と同時に、香ばしい土の匂いを忘れてしまった日本人の食生活の荒廃を悲しむ、異色の味覚エッセーでもある――。 ※新潮文庫に掲載の写真は、電子版には収録しておりません。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シナモン
130
映画の予習。庭の竹の件、奥様の気持ち分かるなぁ。たけのこのしょうが炒めはぜひ試してみたい。春夏秋冬、畑と相談しながら旬のものを使って料理をし、味わう。考えてみればとても贅沢なことなんだなぁ。料理はときに面倒なものでもあるけど、食べることは生きること。大切にせねば。料理をされる水上勉さんの写真がとてもダンディ。滋味深い一冊でした。2022/10/31
アキ
120
映画では沢田研二と松たか子のコンビより、土井善晴の料理がなんと言っても良い。しかし、水上勉のこの本はまさに土を喰う精進料理そのものであった。道元「典座教訓」を引きながら、十二ヶ月の食材の調理法と工夫を語る。「一茎菜をとりて丈六身と作し、丈六身を請じて一宮茎菜と作す。神通及び変化、仏事及び利生する者なり」。軽井沢でひとり、小僧の時等持院で酒好きで貧乏な和尚に怒られながら教わったことを思い出す。具体の材料と向き合って一年経ち、それが精進であったことに気付く。大根や菜っぱに教えられる生活。写真もカッコいいです。2022/11/20
やいっち
118
[追記]昔、読んだ。題名にやられた! 野菜はもちろん、木の果だって、米や麦だって、みんな要するに土。土から生る。つまり、土を喰らってる。精進というが、牛や豚だって土から生る野菜などを喰らってる。肉と言いつつ全然 精進なんかじゃない。土を大地を貪ってる。生きるとは乙に済ましたって、所詮 餓鬼道なんだよ。本書のテーマからは離れるし、水上さんには叱られるだろうけどさ。
はっせー
117
家庭菜園をしている人や食べること・料理が好きな人にぜひ読んでほしい本になっている!著者の水上さんは軽井沢に職場を持っている方でその軽井沢での生活を1月ごと計12ヶ月分。つまり1年間をまとめたのがこの本である。水上さんは職場の周りで野菜などを育てて過ごしているため1ヶ月ごとのテーマが食べ物になっている。そして旬のもののお話を紡いでいる。食べ物を食べることはすなわち土を喰うこと。そのぐらい素材について向き合っている。旬のものを自分で育てて調理をする喜びを感じることができる本になっている!お腹が空いてしまう!2022/10/25
ちゃちゃ
106
土を喰うとは、旬、即ち季節を味わうということだ。水上氏は9歳で禅寺に入って修業を積み精進料理を身につけた。日々の料理は畑と相談して決める。その経験が作家として独り過ごす軽井沢の山荘で活きる。畑を耕しては旬の野菜を育て、野山に分け入っては山菜や茸を摘み、自然の恵みに感謝して食べる。その喜びや楽しみを月ごとに綴ったのが本エッセイだ。生きるとは食べること。食べるとは自然の命をいただくこと。背筋を伸ばして合掌する、その意味がしみじみと伝わってくる。素材の持ち味を活かした精進料理の、なんと味わい深く豊かなことか。2022/11/14