内容説明
注目を集める画期的ながん免疫治療薬ニボルマブはどのようにして生まれたのか.衝撃的といわれる効果は,従来の治療法とは全く異なる原理によって導かれている.著者は,治療薬のもとになったPD-1分子を発見し,開発までを指導してきた.生みの親本人が,新たながん免疫治療の原理と新薬誕生までの曲折を語る.
目次
目 次
第1章革新的がん免疫療法の誕生
がんとの闘い/がん治療の新たな道/“ブレーキ”をはずして活性化させる/変化するがんをどこまでも追いかける/保険医薬としての承認が進む/従来の治療法との三つの大きな違い/驚くべき治療成績/高い有効性と長期の効果/効く人を増やす,見分けるという課題/拡大するマーケット
第2章免疫学の発展とがん免疫療法のたどった道
免疫ががんに関わる状況証拠/免疫寛容の概念の誕生/免疫学の発展に並行して/ 「新しい抗原」とワクチン/否定的な見方が定着していた 2000 年代初頭/T リンパ球の役割の探究/反応を抑制する T 細胞/キラー細胞の“ブレーキ”への着目
第3章PD-1 抗体治療の研究・開発の歴史
偶然に始まる発見/人の自己免疫病との類似/ブレーキは細胞内へどう伝わるか/結合相手の分子はさまざまな細胞で発現されている/抗がん剤への確信/PD-1 阻害はがんの増殖を抑えた/開発にこぎつけるまでの曲折/衝撃的な治験結果/急速に進む治験/広がる承認/幸運が重なった
第4章PD-1 抗体治療の今後の課題
PD-1 抗体治療の特色/効かない患者の存在/効く/効かないの事前判定/薬の値段/適応拡大のスピード/副作用のコントロール
第5章基礎研究の重要性──アカデミアと企業の関係を考える
新たな競争の始まり/ブレイクスルーはデザインできない/生命科学の特質/基礎研究の深掘りと製品化/シーズを見極める眼/次世代のシーズを育むために/製薬企業のゆくえ
注