内容説明
イギリスの離脱、ギリシャの巨額債務、押し寄せる難民…EUの3大問題はどう解決されるのか?
およそ30カ国へと広がった加盟国の間では、考え方や経済的な能力の違いもめだつ。
EUは統合の形を変えざるを得ない。「アラカルト欧州」、「2速度式欧州」などの方式をはじめ、新たな統合の形が模索されている。
それは国際政治やグローバル投資家、欧州関連企業に、どのような波紋を広げていくのか。
EU研究の第一人者が、不安定化する欧州を展望する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Miyoshi Hirotaka
18
二度の大戦に懲りた欧州は統合を模索。EU の原加盟国を一言で括ると敵国とその軍隊の通り道。あるいは、神聖ローマ帝国+フランス。そこから、海峡や山脈を越え、旧ソ連との緩衝地帯へ版図を拡大。域内不戦の達成後は単一市場へ参加することのメリットを加盟国が享受。一方、破綻懸念国への対応、域内不均衡是正の経済的負担、多様性の受容による自国文化の変容や上書きなどデメリットが無視できなくなった。同盟や条約といえども一時的な利害の一致に過ぎない。その継続、脱退の選択肢を作るのは政治家の役目で、それを判断するのは国民の仕事。2023/03/22
スプリント
8
ギリシアの財政破綻からイギリスのEU離脱とEUの将来に陰りがでてきました。EU内で広がる格差と不公平感は解消することができるのか、その方策を本書は論じています。 EUが抱える問題点と取りうるべき施策を理解することができます。2016/10/24
紫の煙
4
イギリスのEU離脱で注目を集める欧州の危機を、統合方式をキーに書いている。随分複雑なルールを作ったものだと驚くが、東欧諸国が加わった以降の様々な加盟国をまとめる事がいかに困難かわかる。イギリスの離脱も突然出てきた話ではない。今年は目が離せなくなりそうだ。2017/01/29
四ツ谷
2
EUの体制について、歴史と法の面から解説されている一冊。今、気になってるのは米中の貿易摩擦よりもドイツの景況感と英国のEU離脱。EECから始まった欧州統合はその特性から国家主権と民主主義と欧州統合は始めから同時に実現されないっていうのは興味深い。2019/04/02
taming_sfc
2
本書は一般向けに書かれているが、二点注目に値する。第一は、ロドリックのグローバリゼーションのトリレンマをEUに置き換え、現在生じているEUの問題に明晰なメスを入れたこと、第二は、二速度式EUやEUアラカルトの議論を踏まえ、EUの将来像を危機の中から展望したことにある。2019/04/08