太陽と痛み

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太陽と痛み

  • ISBN:9784152096364

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内容説明

渇いた大地。いつ、どこなのかはわからない。長いあいだ雨は降らず、降り注ぐ強い日光が人々の肌を焼く。ある理由から村を脱走した少年は、逃亡の途上で無愛想なヤギ飼いの老人に出会う。過酷な旅路をともにするうちに、次第に心通わせていく二人。だが、村から彼らに追っ手が迫り……この道の先に救いはあるのか。世界に衝撃と深い感動を与えたスペイン発のベストセラー小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Willie the Wildcat

61
人間不信・・・。心の痛みを言葉にしない少年と老人の共通項が、次第に2人の心を開く。生きる術と心の救い。術への赦しが、警官の埋葬。無言の教えが少年の導く。老人の埋葬に心。苦しみの緩和とあるが、心の折り合いではなかろうか。老人の語った「キリストの冠」の3つの能力の過程を辿る少年。松葉と土の同化。示唆する生死と還る心。路は険しく、光が必ずしも見えずとも、少年は進むべき路が心に開かれた気がする。2017/01/15

あじ

43
ギラギラと肌を焼く太陽、舌が上顎に張り付きそうな程の激しい喉の渇き、縮んで干からびてしまった胃袋。物語はどこか遠くて、近い場所で進行する。賞金を懸けられ追っ手から逃げている少年が、ヤギ飼いの老人と巡り会う。か弱き少年と老体のヤギ飼いは、名を与えられぬまま物語をさすらい、互いの事情を伏せたまま、無言の意志が終盤爆ぜてゆく。明らかな事は何一つ語れない。だからこそ思慮深く、物語に没頭した。★4/52016/11/15

baboocon

42
アンダルシア地方の赤茶けた荒野を行く少年とヤギ飼いの姿が目に浮かぶ。といってもそれは牧歌的な姿ではなく、ひたすら無慈悲に照りつける太陽の暴力的な陽射しからわずかでも逃れようとする歩みだ。太陽の陽射しと、警官と、自然からも人からも縮こまるようにして身を隠そうとする少年を守ろうとしたヤギ飼いの老人は、何を思ったのだろう。ヤギ飼いの最後の頼みを守ろうとした少年は、ひとり残されたあと何を思うのだろう。2016/11/28

Apple

38
過酷な平原で、少年が山羊飼いの老人と出会い、彼にさまざまなことを教わって成長する物語だと感じました。少年は追跡者の悪意に触れ、自分も敵に暴力を振るう瞬間があります。しかし「老人は、強欲と情欲だけを理由に暴力がまかり通る大人の世界へ入る鍵をくれはしなかった」のであり、少年が善悪を判断する責任を失わぬよう導くのが印象的でした。2人の最期の場面での「少年は主の祈りを唱え始めたが、途中から声が低くなり、祈りの言葉は唇のあいだに消えていった。老人の名前を、知りたかった」という部分に、少年の老人への愛を感じました。2023/05/17

ヘラジカ

38
読み始めから唐突に読者は乾いた大地へと放り出され、バックグラウンドも知らされぬままに少年の過酷な逃避行を共にすることになる。背景だけではなく物語が進行していく中でもあらゆるものが決して雄弁には語られない。そのため本来は非常に簡素でスマートな作品という印象を受けるはず。しかし、読後に感じられる疲労感や満足感は、200ページ強というページ数からは考えられないものがある。2016/09/23

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