白水Uブックス<br> 第三の魔弾

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白水Uブックス
第三の魔弾

  • ISBN:9784560072011

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内容説明

16世紀、神聖ローマ帝国を追放された“ラインの暴れ伯爵”グルムバッハは新大陸に渡り、アステカ王国のインディオたちに味方して、征服者コルテス率いるスペインの無敵軍に立ち向かった。グルムバッハは悪魔の力を借りて、コルテス軍の狙撃兵ノバロの百発百中の銃を手に入れるが、その責を問われ絞首台に上ったノバロは、死に際に三発の銃弾に呪いをかける。「一発目はお前の異教の国王に。二発目は地獄の女に。そして三発目は――」コンキスタドール(征服者)時代のメキシコを舞台に、騙し絵のように変幻する絢爛たる物語を、巧みなストーリーテリングで描き切った幻想歴史小説。大戦間ドイツで絶大な人気を博し、ボルヘス、カルヴィーノ、グレアム・グリーンら、名だたる目利きたちが愛読、世界的な再評価が進んでいる稀代の物語作家ペルッツの長篇第一作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

48
「一発目はお前の異教の国王に。二発目は地獄の女に。そして三発目は――」アステカ征服をもくろむコルテスに対するはドイツの暴れ伯。ただ手に入れた弾丸は呪われていて。主人公が呪われた運命に否応なしに引き込まれていくっていう構成は、『スウェーデンの騎士』や『ボリバル侯爵』と共通しているように感じる。とくに『ボリバル侯爵』とは三つの予言が成就するという点で一層それが顕著だし。にも関わらずそれに立ち向かう主人公の雄々しさと、予言が成就した瞬間の無常観が何とも言えない。特に第三の魔弾が命中した時の寂寥感といったら……。2015/10/09

星落秋風五丈原

27
ペルッツの他の著作「スウェーデンの騎士」「ボリバル侯爵」同様、今回も導入部である「現在」と本編である「過去」の二段構成。他2作品が「現在」→「過去」という流れであったのに対して今回は「現在」→「過去」→「現在」の流れに。そしてその並べ方に意味がある。記憶をなくした片目が義眼のハンガリー騎兵隊の大尉の傍らでは、スペイン騎兵の一人の老兵が、「ラインの暴れ伯爵」と呼ばれた男の物語(=実は大尉)を語り始める。本作のみ物語がもう一度「現在」に戻ってくるのは標的を定められた魔弾の3つめの呪いと関係している。2015/10/06

pyoko45

22
コルテスによるアステカ侵略という史実を元にした伝奇小説。一癖も二癖もある人々(+α)が入り乱れての幻想的な冒険活劇部分だけでも読み応えがあって充分に面白いのだけれど、あとにつづくエピローグを読み終えて眩惑。プロローグなどを読み返したうえで、改めてエピローグを噛み締めるほどに仄見えてくるその巧緻な仕掛けに瞠目。素晴らしい。2015/07/22

おおた

12
読書会に向けて読了。デビュー作というのを聞くと荒削りな印象は否めない。マジック・リアリズム(略してマジリア)感が強いが、本書が書かれた時にはまだ「マジック・リアリズム」という形容詞はなく、10年後に同国のフランツ・ローが言い出す。そう考えるとラテンアメリカという場所のマジリア感ぱねえということです。2015/09/17

Tui

11
舞台はコルテス将軍率いるスペイン軍に暴虐の限りを尽くされている16世紀のアステカ帝国。キリスト教の布教を名目に黄金や宝石を手にせんとするスペイン軍の、略奪と殺戮の描写が目に粘っこい。悪魔との取引で小銃を手に入れたドイツ人グルムバッハは、三発の弾で彼の地の歴史を意のままに操ろうとするが…。欲望と力に身をまかせることで容易に獣となる人間たちの、南米文学を思わせる濃厚な描写に毒されるが、実はユダヤ系作家によるドイツ文学の作品というのが意外なところ。2015/08/08

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