内容説明
弾丸に晒しを巻かなければ使えぬ大砲――。異国船の襲来に備え、江戸湾防備を命じられた武州忍藩主・松平忠国は衝撃の事実に戦いた。永らくの泰平が招いた失態とはいえ、これでは夷狄を追い払えない。日本に未来はあるのか。幕政の再建に奔走する忠国をはじめ、未曾有の国難に立ち向かう吉田松陰、佐久間象山らの奮闘を描く感動の幕末群像記。
感想・レビュー
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がんぞ
5
海音寺潮五郎、司馬遼太郎のような筋書き・キャラクターの小説ではなく具体的《国防》がテーマ。ペリーの艦隊は「黒船」というようにブリキ張りで小銃弾など跳ね返すだろう、だが大砲の用意はなかった!軍事は相手の意志では無く能力を見て必要を判断する。松平忠国・井伊直弼が疑ったように、ペリーは出来たて蒸気船砲艦で示威威嚇したが、数十隻の艦隊などなかった。が「砲台を築くまで引き延ばして」はナンセンス、条約締結しかない…。やがて来る「農民を兵とする以外に無い」もフランス革命で国民軍が興されてから数十年経っているに過ぎない…2013/10/07
しんのすけ
3
なかなか難しかった。 井伊直弼の立場から見た安政の大獄と暗殺されるまでが書かれている。井伊直弼の生い立ちなどは知らなかった。それぞれの立場で懸命に生きた人々がいた時代でみんな命懸けで生きて来たんだなと思った。候文が多く難解で登場人物も誰がどっち側なのか理解出来ない部分もたくさんあった。2023/07/08
yasu7777
2
★★★☆☆ 渋谷3035-3682021/08/26
新山下
2
幕末1843年から1860年までの出来事で、登場人物が多いが明治維新で有名な坂本竜馬や高杉晋作は登場しない。幕府や朝廷の権威や形式主義では対応出来ない時代の流れがよく描かれている。2015/03/04
Bigdee
2
本作には主人公がいない。重要人物は井伊直弼、松平忠国であるが、本作の主人公は「開国」という事象そのものである。故に娯楽としては非常に読み辛く、極めて史実に忠実であるため、もはや歴史の教科書に近い。 開国とは二百数十年続いた幕藩体制崩壊の狼煙であるが、昨今、直面しているTPPという開国もまた日本にとって大きな転換期となるだろう。歴史は繰り返す。人は歴史から学ぶ事もできる。開国主義者ではなかった大老・井伊直弼が何故、殺されるほど開国を押し進めなければならなかったか。それが本当の政治ではないか、と思うのである。2012/03/26