内容説明
麩嘉の笹巻き、名古屋流スキ焼き、黄肌の鳥、桐正宗……、味を訪ねて西東。あまいカラいに舌鼓。うまいものに身も心も捧げた稀代の食通作家による、味の文壇交友録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまご
16
「天下一品」よりも著者が若いころの作品でした.なぜか小説よりも,この本が重版かかりまくりで著者的に複雑な気分だったそうですが,いやはや楽しい.美味も満載.特に和菓子.戦争中の厳しい状況の中でも,みな互いに支えあってやりくりしあって,ほろりとする場面もあります.こんな食べられない時代は再び来てほしくないなあ. 相変わらずの文壇裏交遊録のような内容も興味深いですね.無知なので,芥川は登場するのに太宰はでてこないの不思議ー,とか,ちょっと思いました.2018/10/04
お萩
6
和菓子、特に羊羹が食べたくなる。どんなお菓子なのか画像検索を何度もしつつ味の想像をする…戦前と戦後、そんなに菓子の味は変わったのか。いま、この時代に筆者がいたら、やっぱり甘すぎると苦言を呈するだろうか。芥川がモテただろうことがなんとなくここでも判明してしまう。長い睫毛って...。泉鏡花が栄養失調で倒れるくだりではじめて彼を可愛いと思った。文豪こぼれ話、美味しいお菓子や食べ物情報も詰まってかなりお得に感じた一冊。2014/12/11
kuchen
5
昭和二十年代後半に書かれた食に関する随筆集。文人との交友録でもある。「舌が堕落した」、「不愉快な店」など、歯に衣着せぬ語り口。おいしいと感じたものは、本当においしそうに語る。戦前から戦後の生活が分かるのも興味深いし、有名作家のエピソードも楽しい。芥川がお汁粉を食べる描写は印象的。こだわりと率直さとユーモアがある文章にやみつきになる。2017/03/04
niz001
5
「天下一品」から遡ってきた。やはり面子の豪華さに驚く。魯山人がブラリと遊びに来た、だと!?泉鏡花のエピソードがお気に入り。2015/08/18
bunca
3
和菓子屋さんがスポンサーのミニコミ誌に書かれたこともあってか、お菓子、特に餡物への並々ならぬこだわりの記述が多かったです。 昔のお菓子は甘い、と思っていましたが、小島先生によると戦後甘くなったとのこと。 砂糖のあくを抜く、甘さ控えめ小豆の香りがする餡をこよなく愛するのが伝わってきます。 また、泉鏡花との交流が描かれている部分が面白かったです。 潔癖症の鏡花のために淹れたすず婦人の熱々の番茶を実際に飲み、淹れ方を教わっているところがうらやましい。2015/06/18