- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
祖霊たちに扮して踊る盆踊り、馬への信仰が生んだ馬頭観音、養蚕を守るオシラさま――。庶民に信仰され変容してきた仏教の姿を追求し、独自の視点で日本人の原型を見出す。仏教民俗学の魅力を伝える入門書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
47
盆踊りや節分の鬼、仏壇など仏教に影響を受けた庶民信仰が今も残っている。仏教民俗学の提唱者である著者が日本各地を歩いて調査した実例を盛り込んでわかりやすく書かれている。従来の教理的探求や哲学的探求からはうかがい知ることのできない日本人の宗教観が明らかになっているところが興味深かった。また、西行を純粋な求道者ではなく、勧進などを行って日本各地を回る高野聖として見ていく新たに視点が提示されているのもよかった。2021/03/08
世話役
13
柳田國男に教えを受けた著者が、その理論ないし視点をベースに日本仏教や習俗全般を俯瞰した書籍。現在の仏教は上流層のための哲学に成り果てており庶民のニーズを満たしていないこと、著者自身も浄土真宗の家柄ながら、真宗の僧侶から檀家に祈祷や供養を頼まれて困るという相談を受けた際、その僧侶のほうが世の中から期待されている役割を分かっていないと感じた、と指摘していた辺りは痛快であるとともに伝統仏教衰退の理由を端的に示したものとして大いに首是できるものであった。2014/12/31
きくち
6
学生時代購入したものを寝かせまくっていた。日本古来の土着的信仰と仏教の関わり。日々の暮らしに汲々とする名もなき一般庶民における民間信仰、まじないや迷信のようなものから日本の民俗文化、仏教文化を考えるもの。仏典などのいわゆる「正統」でない信仰を邪道として除外するのではなく、むしろより生活に即した切実なよすが、心の拠り所として変容していったものとして考えることで、実用化された宗教観が垣間見える。…ちゃんと学生時代に読んどけば良かったです。2018/09/30
三谷銀屋
3
貴族などの支配階級の宗教ではなく、名もなき庶民に代々受け継がれてきた宗教的風習や精神を、あくまで庶民の目線から読み解いた随筆集。庶民の歴史故に記録に残らず消えていった、あるいは消えていこうとしている風習に込められていた意味を改めて思った。今の時代は「あの世」はどちらかと言えばファンタジー的な観念だけど、遥か昔は生活や人生に密着した思想だったのだろうし、それ故に古来の原始的死生観が仏教と混ざり合って、様々な民間信仰が形作られた。各地を行脚して「庶民の仏教」を支えた遊行聖の話や仏壇の成り立ちなどの話が面白い。2019/08/11
hojichabuster
2
16 冊目。先日読んだ山岳の本から修験道の民俗学に繋がった。五来先生は良い意味で「昔の人」で、旅は人間性を回復するものであり、近代技術を使った(車や電車)旅は自然に回帰することのできはいものとピシャリと言う。本作の後半は特に日本人の死生観、霊山や修験道について、そして庶民性について論じられている。僕は日本人でもないけども、ちょっと足を使った旅をしたくなるそんな本でした。2022/06/13