内容説明
昭和の初めの東北、青森――。呉服屋〈山勢〉の長女と三女は、ある重い運命を負って生まれついた。自らの身体を流れる血の宿命に脅えたか、心労の果てに新たな再生を求めたか、やがて、次女は津軽海峡に身を投げ、長男は家を出て姿を消した。そして長女もまた……。必死に生きようとして叶わず、滅んでいった著者自身の兄姉たちの足跡を鎮魂の思いでたどる長編小説。大佛次郎賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
107
いわゆる大河小説だが,読んでいてひどく懐かしい気がした。舞台は青森で兄弟が多い中、必死に生きていくさまを描いている。主人公だと思っていた「れん」が自殺したり、清吾と添い遂げると思っていた苗が赤子の堕胎のため、死んだりと予想外の展開もあるのだが…一環して流れている、昔ながらの物語は読んでいてなぜか心落ち着く感じがする。2010/11/27
まーみーよー
25
うまく言語化することが難しいが、名作とはこのような作品を言うのだろう。割と平易な文体であり、過度に情感がこもっているわけではないのに、胸ぐらをつかまれて揺さぶられる。400ページを超えたところでどうしても本を置くことができなかった。著者の私小説としての位置づけではあるが、家族の運命が悲劇的だから読まれる訳ではない、物語としての凄みを感じた。長女るいが妹に「先立たれた」時の心情が特に響いた。身内に難病持ちがいる身としては思うところがある。強い余韻を残した。 2023/02/08
JUN
23
著者の実際の家族、兄弟に関する私小説。2人のお姉さんの自殺、お兄さんの失踪など、かなりの不幸が降りかかる。もちろん多少の脚色もあるだろうが、ウルウルしながら読了。2014/08/07
朗読者
22
著者は3男3女6人兄弟の末。長姉と三姉がアルビノで弱視。二姉が遺伝法則を習い、自分の遺伝子に気付いて医者に専門書を尋ねると長兄が既に借りていた。受験失敗で絶望し転生を願って末弟の誕生日に身投げ。長兄は妹と身重の恋人の死が重なって絶望し失踪か。長姉は弱視から全盲に進む自身の不幸を嘆く中で兄妹の選択に我が意得たりと服毒。一年足らずで3人兄弟に変わる。この私小説はここで終わるが、著者の次兄はこの直後に失踪する。事実なのでただただ驚愕する。短歌の才があった二姉の転生が叶ったのか、末弟は後に芥川賞作家となった。壮絶2024/03/21
やどかり
19
三浦哲郎氏の自叙伝的小説とは知らずに読み始め、途中でそれを知ったがにわかに信じがたかった。昭和初期は迷信などが信じられていただろうし、差別も今よりひどかっただろう。そんな時代に自分の力で変えようのない運命に翻弄される家族。作家やご両親の気持ちを思うといたたまれない。内容は重いが、文章が穏やかで東北弁も柔らかく響き、人物の心の描写も細やかだ。作中のるいの詩が悲しくてきれいだった。40章の羊吉の記憶は作家自身の幼い頃の記憶なのかもしれない。白い夜を旅する人たちに幸せになってほしいと思う。2013/02/14
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