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内容説明
大日本帝国における主権者は天皇であり、その大権は、各国家機関を経て代行されるシステムとして運用されていた。しかし、それは天皇が単なるお飾りであったことを意味するわけではない。天皇自身も政治的意思を持ち、それを取り巻く機関「宮中」もまた、国家の運営に大きな力を持っていたのだ。「宮中」という視点から、「内閣」「議会」「軍部」など、各国家機関の思惑、それらから織りなされる政策決定時の錯綜に注目し、大日本帝国のシステムと軌跡を明快に提示する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ジュンジュン
10
明治憲法体制とは天皇が大権を有し、其の実、各国家機関が大権を代行する多元的なシステム。その国家機関とは、行政権の内閣、立法権の議会、統帥権の軍部、諮問機関の枢密院、そして、大権の総覧者に最も近い「宮中」。本書は宮中グループのプロトタイプから、形成、変容の過程を描く。重要人物は2人だろうか、内大臣・宮相・侍従長のトロイカ体制を築いた牧野伸顕(形成期)と、内大臣中心体制を築いた木戸幸一(変容期)。新書という制約から、やや駆け足なのが少し残念。2022/09/11
バルジ
3
近現代史のおける宮中勢力の存在をコンパクトに概観。 読んでいて面白かったのは、宮中勢力の中でもその職務観には相当な差異があり、その差異に応じて官職の職掌範囲も異なるという点だった。 内大臣・宮内大臣・侍従長の三位一体から「内大臣一強」とも呼べる体制に変化する過程は大変興味深い。2019/01/21
最終バック九番手
1
ネトウヨどもには都合の悪い真実が書かれている一冊…戦前の体制は天皇の鶴の一声で何もかも決まるようなイメージを持っていたが見事にくつがえされた…明治の場合は諸大名とそれほどレベル差がなく大正はともかく頼りなくて昭和の前半は自身が若すぎて軍が強すぎたんだなというのが率直な感想…参考文献:あり…第一刷発行:2012年5月10日…本体780円2012/08/29
ma3
1
日本近代史を「宮中」=天皇側近首脳から見る切り口は新鮮。「宮中」グループが政治集団の一つとして捉え、近代政治史に与えた影響の大きさを描いたところに、認識を新たにしました。明治憲法体制下で、天皇に責任を負わせないようにする無責任体制を維持する勢力。行政府から自立し、暴走する軍部。統制がとれなくなった国家統治システムの機能不全。そのもとで破滅に向かう日本。その経過概略がつかめる書です。また、その破滅に向かう渦中における木戸内大臣の歴史的役割・評価については興味深いものがありました。2012/08/24
プリン
1
著者の専門とする昭和戦前期から、明治期と大正期にまで少し筆を伸ばした著作。とはいえ、分量的には明治期と大正期はごくわずかで、率直に物足りなく感じます。昭和期についてはやや通史的な解説が多く、宮中勢力が活躍する首相奏薦の過程などに的を絞ってもらいたかった感があります。西園寺の最晩年の政治的役割についてもやや過大な感じがしました。一方で牧野の「輔弼」のあり方に関しての総括には大いに納得させられました。また、「輔導」という観点から天皇と側近の関係を再考する価値を感じました。2012/05/20