内容説明
34歳のフリーター・彩はバツイチの54歳・伊藤さんと同棲している。ある日、彩のもとに兄から「お父さんを引き取ってくれないか」との依頼が。彩は申し出を拒むが、74歳の父は身の回りの荷物を持って、部屋にやってきてしまった。父は「この家に住む」と譲らない。その日から六畳と四畳半のボロアパートでぎこちない共同生活が始まった。誰にでも起こりうる家族問題を、笑いと緊張の絶妙なタッチで描く傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
相田うえお
189
★★★★☆17091 本屋でバイトしてる彼女は、周りに内緒で20歳年上の彼(伊藤さん)と同棲中。ところが兄から、同居中の父親を引き取れという依頼が!兄には断ったものの、父は彼女のアパートに来てしまい、3人での暮らしが...と始まります。いや〜、伊藤さんって何者なんだろ?ちょっと抜けた感じなのに何故か出来過ぎで凄くいい人でしたね。いや〜この作品には色々と考えさせられました。。人には必ず晩年が訪れます。誰もが進む道。どの様に過ごすか?充実出来るかは結局のところ本人の意識次第なのでしょうねー。映画も気になる〜!2017/09/11
しいたけ
100
ああ、伊藤さん。何と言っても、もう伊藤さんに尽きる。54歳バツイチ、たぶんアレが25センチ(48歳パート主婦、本間さんの見立て)。映画ではリリー・フランキーが演じるとわかっているせいか、端々にエロさと品と、どこかにエキセントリックな部分を隠しているはずとの思い込みが入る。そして、きっとそれは当たっている。それでも暖かくて面白がっていて諦めていて寂しさを知っていて、人のドロドロを大切に掬って竹ザルで漉してお日様に当ててくれるような人。伊藤さんの迷いや、彩より先に老いる切なさを、どうか私には打ち明けて欲しい。2016/10/23
美登利
96
映画化されると新刊コーナーで見つけ、キャストはわからないまま読み始めたけれど、もしかしたら?と思ったらやはり伊藤さん役は彼でした!中年男で妙な色気があり、飄々としてる人といったらあの人以外に居ない(笑)その後はもちろんキャストで脳内変換。お父さんは物語からするともう少し枯れたイメージです。中澤さんの小説は初読み。劇作家さんらしく映像が頭に浮かびますね。物語の内容はこれから多くの日本人が抱える老親との問題。元より希薄な親子関係の人の方が多い、私も。他人を間に入れてスムーズに進む面は確かにあると実感します。2016/10/18
miww
88
初読み作家さん。どこの家にもあるリタイアした父親を取り巻く家族お話。20歳年上の伊藤さんと暮らす彩の部屋にお父さんが転がり込む。だんだんと居場所をなくす父の寂しさ、父を思いながらも一緒に暮らす事を疎ましいと思う娘。そんな父娘の心をクッションのように解していく伊藤さん。この方、ホワッとしてるけどかなり魅力的です。ラストの「俺は逃げないから」彩の背中を押す言葉に彼の器を感じるなぁ。表紙のリリーさん、上野樹里ちゃん、藤竜也さん。キャラピッタリのその絵で読み終えました。2016/10/27
ケンイチミズバ
87
お父さんと伊藤さん。韻を踏んだナイスなタイトル。34才フリーターの彩と給食補助員のパートに合格したバツイチ54才伊藤さん。そんなどこにでもいる?平々凡々なカップル?歳の差20才、幼い頃見たテレビ番組が全く重ならない!で、この状態を父親が見たらどうなるのか。そして父が転がり込んでくる。同棲という気楽さに甘えて生きてる部分がダメなのだけど、ラストはジーンときた。二人も周囲もいい人たちばかり。何と言っても大人な伊藤さんがいい。傘を持って駆けだした彩さんは、お父さん一緒に暮らそうよと言ったに違いない。面白かった。2016/09/05