泉

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  • ISBN:9784488010638

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内容説明

イギリス全土で3年にわたって異常な干魃が続いているにもかかわらず、“わたし”がいる農場〈泉〉にだけは雨が降り、草木が青々と茂っている。“わたし”はここで自宅監禁生活を送ることになった。〈無個性〉〈3〉〈ボーイ〉と名付けた男たちに常に監視され、行動を厳しく制限されながら孤独に暮らす“わたし”を、殺人事件の記憶が苦しめる。なぜ家族も友人も失うことになったのか? 自分は何をしてしまったのか? “わたし”は精神のバランスを崩すほど思い悩みながら〈泉〉での生活をふりかえり、殺人犯をつきとめようとする――。異様な状況下で傷ついた女性の、追憶と再生の物語。/解説=川出正樹

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

星落秋風五丈原

35
『〈泉〉はふたたび、わたしを手にいれていた』まるで、デュ・モーリアの『レベッカ』のような一文で始まる小説の語り手は、自宅監禁されることになった“わたし”=ルースだ。作品自体は旧約聖書のアダムとイブの『楽園追放』に準えられている。ルースと夫マークはロンドンでいわれなき罪に苦しみ、再出発の地を求めてきたアダムとイヴ。彼女と夫が偶然買った農場が、汲めども尽きぬ泉があるエデンの地。聖書ではエデン以外の場所も人も存在しなかった。しかし現代の楽園は、二人もただ無自覚に恵みを受けてはいられない。2017/03/19

ヘラジカ

30
終始重苦しく垂れ込める空気と語られる悲劇の数々は、さながら少しの陽も射さない曇天の続く梅雨の時期を想像させる。終末的な長期旱魃が深刻化するイギリスの中で、主人公の住む場所だけが雨の恩恵を受けていることを考えると、これは当然のイメージであるのかもしれない。鬱々とした物語は決して読んでいて楽しいとはいえないのだが、読了直後には思わず感嘆のため息が漏れた。その内容とこの本が著者の出世作であることから、レッシングの『草は歌っている』を彷彿とさせる。もしかしたらこちらの方が鮮烈なデビュー作かもしれないのだが。 2016/09/03

ぽけっとももんが

7
自分の記憶や行動に自信のない人の延々続く独白は苦しい。イギリスで(多分世界中でも)何年も続く旱魃のなか、ただ一か所雨が降る「泉」に住むルース。「事件」後、「泉」に軟禁される現在と、夫と「泉」に引っ越してからの悲劇へ向かう過去が交互に語られる。ミステリ的要素とファンタジックな要素、そしてリアルな夫との不仲や得体の知れない宗教へ傾倒する様子が混在する。そもそもなぜ「泉」にだけ雨が降るのか、何かを象徴しているのか。ルースみたいな女性は嫌いだ、というのはよくわかった。2017/03/16

ボウフラ

1
イギリス全土で旱魃が続く中で唯一雨が降っている地である「泉」と呼ばれる農場。そこに怪しい宗教団体がやってきてから夫婦の仲が悪くなっていきさらに孫が死んでしまう。物語の核心は家族でありそれを生かすための終末モノとミステリーを掛け合わせた設定になっていると感じた。そのため枠の部分の物語の終息のさせ方はとってつけたように拵えた感じだが、家族の再生の物語として特に主人公の心の揺れ動きや心の弱さがうまく表されていると思った。83点2025/06/10

ocean

1
私の好みではありませんでした。 2016/11/18

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