内容説明
自室で拳銃自殺を図ろうとしていたテッドの前に、突如リンチと名乗る見知らぬ人物が訪れる。彼は、ある“組織”にテッドを勧誘しようとするのだが……。アルゼンチン発、読者を幻惑の渦へと巻きこむ奇書登場!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
62
未だかって読んだことのない変な小説だが、緻密なプロットでとても魅力的な作品だった。一章と二章を読んでいて、ケン・グリムウッドの「リプレイ」のようだなと思った。3、4章は全く別の世界に入ってこれが奇怪な物語で、何かカフカがミステリーを書いたような雰囲気で、小説の世界は「カッコーの巣の上で」を思わせるものだった。夢か現実かわからない世界を行き来するようで、何とも不思議だった。読み通してみて、とても楽しんだが、内容をすべて読み解けているとは思えない。再読していつか全容が解明できるだろうか・・?2016/10/28
ゆかーん
59
どこまでが現実で、どこからが妄想なのか…⁉︎読めば読むほど、テッドの精神世界に飲み込まれてしまいます。第一世界と第二世界のねじれの中に、閉じ込められた彼の心の行き着く先とは?読む物の期待を裏切らない、幾重にも枝分かれする展開に夢中になることでしょう‼︎チェス駒のヒントを追いかけることで、新たに上書きされる記憶の数々…。どれが正解で誰が嘘なのか、事件を追いかけるテッド自身も、本当の事が分からないのですから、読者も最後の最後まで騙されること間違いなしです!オポッサムの謎が最後まで分からなかったのか残念です…。2016/11/02
ぐうぐう
40
すこぶるおもしろい! 主人公が自分の頭に向けて銃を構えた場面から始まる物語は、謎の上に謎が重なり、事実が次の瞬間には偽りとなっていく連続の展開で、主人公同様、読者も読み進めば進むほど、何が真実かわからなくなる、そんな翻弄される快感に満ちている。登場人物の一人である女医が言う。「推理小説の熱心な読者である父がいつも言っていたことを思い出した。あるディテールが存在理由を持たないように見えたら、それにこそ注目しろ。そうすることで、必ず本質的に重要なものをあぶりだすことになるからだ。」(つづく)2016/10/02
かわうそ
38
提示された要素を組み替えて別の方向から光をあてる作業を繰り返すことで少しずつ物語の姿を変貌させて読者を翻弄する手管はどんでん返しというのともまた違ってなかなか面白い。2部までの派手な展開からすると真相はちょい地味ですが。2016/09/24
藤月はな(灯れ松明の火)
36
自分が死のうとした時に訪ねてきた男、リンチに代行殺人を頼まれたテッド。明らかに怪しい男の依頼によってテッドは混乱に湧きこまれる。あの妙な人物紹介はだからか!リンチがどうしてもディヴィッド・リンチと脳内で変換されてしまう。そしてボビー・フィッシャーの紹介に吃驚。後、テッドの語りによって明らかに印象が変わってしまうオポッサムに困惑。なぜにオポッサム・・・?しかし、人の好意に付け込み、お粗末な罪悪感を持ちながら自分の利益にちゃっかりと還元する、寄生虫なローラが嫌いだったのであの足元が崩れるようなラストにはニヤリ2016/11/08