内容説明
日米ともに人種に対する偏見と差別をつのらせて戦われた太平洋戦争。その実態と歴史的背景を克明に追った大著。『敗北を抱きしめて』の前著として必読。「9月11日」以後についての緊急寄稿を付す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
40
名著「敗北を抱きしめて」のジョン・ダワーによる太平洋戦時の人種差別の検証本。目を背けたくなる米英国内の日本人に対する罵詈雑言や偏見にまみれたプロパガンダ。だが、日本も鬼畜米英を煽っていたわけで同類です。戦争がいかに人の理性を失わせ、狂気へと導くかを思い知らされます。2015/11/09
James Hayashi
33
副題に太平洋戦争における人種差別とあるように、人々の心の中の様子、マスコミによる心理戦などで人種差別が作られていた様相が伝えられる。現代にも通ずることだが、イメージ戦略はかなり重要で、サルであり、出っ歯であり、チビであるなど酷い蔑視を日本人に行い戦闘意欲を高めていたのであろう。しかしドイツにその戦略は使っていない。気になったのはバターン死の行進で多くのフィリピーノが銃剣に倒れたとか100人斬りを150人斬りと誇張されているのが目についた。2019/12/31
金吾
32
◎大変興味深い作品です。偏見と自己欺瞞は双方ともにすさまじいものがありますが、そうではないと戦争なんかはできないのだろうなと思いました。また人種差別はなくならないのだろうとも感じました。 2022/06/21
funuu
31
太平洋戦争は人種戦争の面があった。日本は「鬼畜」に対して。アメリカは「黄色猿」に対してして。日本軍のアメリカ捕虜に対しての残虐行為はよく流布されている。それらは「鬼畜」に対して行った。著者はアメリカ軍の残虐行為も取材している。日本軍の死体から耳を切りとりお土産に持ち帰る。まだ生きている傷病兵の金歯を抜きとる等々。それらは「黄色の猿」に対するハンテング感覚だ。鬼は日本人にとって厄祓いの役に立つ。戦後はアメリカ軍がナマハゲになった。白人至上主義者のトランプと黄色習はいつかは衝突がくるかもしれない。2017/11/09
kan
26
「敗北を抱きしめて」と併せて夏の間に読んでおきたかった、長年の積ん読をやっと読み終えた。太平洋戦争時の米国のプロパガンダとして日本人の「原始性」「野蛮性」「未熟性」というステレオタイプの喧伝と白人至上主義、日本の「神の国」思想や優越主義といった精神性を多様な文献や風刺画等から分析していて非常に読みごたえがあった。太平洋戦争はレイシズムを底流としているというのは、終戦直後の対米観を考えると納得する部分もある。それにしても、戦争は始めるのは簡単でも終わらせるのは難しいというのは、歴史が証明する通りだと思った。2022/09/05