内容説明
日本植物学の父と呼ばれた牧野富太郎。花と植物の魅力の真髄を語った表題作、「私は植物の愛人」と軽口を飛ばしつつ研究人生を振り返る「植物と心中する男」などを精選。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
岡部敬史/おかべたかし
118
このシリーズいいですよ。装丁も全編がエッセイというのもいい。栞という冊子が中に挟まっていて、タイトルに応じていろんな人が寄稿しているのですが、本書は梨木香歩さんという素晴らしさ。牧野富太郎という純な植物学者の人間的な魅力を感じられる一冊。こういう「買いたい!」と思う本を作りたいね。いい。2019/12/21
mocha
97
古めかしい文体の中に、牧野翁のチャーミングな人柄が覗いて見える。花の構造について書かれているところはもっと図が欲しかった。なにせ昔の文章で学術用語ときたらなかなかに手強い。でも古い呼び名の漢字を見て、気づきもいろいろあった。自らを「植物の愛人」とまで言ってしまう牧野氏の、90歳を越えてもなお旺盛なエネルギーに敬服した。2016/10/15
こなな
65
人間は植物がなければ生きていけないが植物は、人間がいなくても生きていける。松竹梅の意義がとてもわかりやすくあった。椿の物理的なお話が面白かった。牧野先生は、見ただけで何でも理解できてしまうのだろう。天性の絵心と細やかな観察力と線描技術を持っての独自の植物図も途中に現われる。素晴らしくて見とれてしまう。まさに「日本の植物学の父」である。植物と生きて植物を愛して、そして植物の味方である。植物を知ることの大切さを伝えたい情熱を感じる。巻頭の梨木先生の『永遠の牧野少年』がいい。牧野先生の破格さと魅力を記してある。2024/03/07
honyomuhito
58
植物大好きおじさんからの植物達へのラブレター。「私は植物の愛人としてこの世に生まれてきた気がします」には痺れた。Wikipediaによれば、著者の牧野富太郎は「『日本の植物学の父』と呼ばれ多数の新種を発見し命名も行った近代植物分類学の権威である。」そうだ。 友人にこの人の本を持ちながら、散歩をすると楽しいと教えてもらった。ロマンチストで、思い込みと思い入れが激しそうなおじさんだ。ここまで打ち込めることに出会えた人生は https://chirakattahondana.com/牧野富太郎-なぜ花は匂うか/2018/07/03
よこたん
56
“蜜柑は果実の中の毛を食っており、バナナは果実の中の内皮を食っており、栗などは種子を食っているが、桃などは果皮を食い、梨、りんごなどは花托を食っている。” みかんの果汁たっぷりのアレが毛とは知らなんだ。「牧野日本植物図鑑」、「牧野式」植物図の方だとぐらいしか存じ上げていなかったが、寝ても覚めても植物のことばかり考えていた人だったことが、これ一冊で容易に推察できた。九十四年の生涯で収集した標本は約四十万枚! 表紙も含め掲載されている植物画の筆遣いの美しさにため息がでる。梨木香歩さんの栞も読み応えありだった。2017/05/23