内容説明
海に浮かぶ街、ヴェネツィア。この地で友を亡くし、同じ悲しみを知る君と出会った。――時は明治。日本語講師としてイタリアに赴任した誠次郎は、下宿先の料理店で働く美青年・ルカとともに、迷宮都市で起きる様々な怪事件にかかわることになって――?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
九月猫
47
時は明治、舞台はヴェネツィア。日本語講師として赴任した誠次郎と下宿先の美青年ルカが様々な怪事件にかかわる連作短編集。事件は時代と舞台の幻想的な雰囲気にぴったりだけど、ミステリや物語としてよくできているかといえば、少しばかり物足りない。けれど、好きか嫌いかでいえば、かなり好き。ただ、清次郎の幼馴染で若くして亡くなった清人が優秀な人物であったことは、ルカ以外の人の口からも誠次郎の回想からも窺えるのだけど、ルカが崇拝する如く慕っている理由がわからないまま終わったのが心残り。もしかして続くのかしら。2016/09/22
honoka
44
ヴェネチアに行きたくなる、そんな話。舞台が異国のせいか日本の明治は感じられない。主人公誠次郎の前任で幼馴染の清人を崇拝しているルカの情が深い。誠次郎を通して早逝した清人の夢が叶い「清人は幸せだった」とルカが思えるエンドで良かった。2016/08/24
ひめありす@灯れ松明の火
39
三木さんお得意の異邦の青年シリーズ。今回は水の都ヴェネチアで健気に頑張る誠次郎のお話です。誠次郎も清人もどちらも「セイ」だから何か秘密の繋がりがあるのかなーと思ったのですが。まさか。どうして清人は死んでしまったのだろう。この地で彼が打ち込んだ杭に船を結んで、今もどうにか耐えている人達がいる。すうすうと甘くて冷たい水が流れ込んでいくような優しいお話ばかりですが、誰の心にも清人の死という大きな穴が開いているからそこにばっかり水が注がれている感じ。願わくば、そこから新しい流れが生まれて船が再び漕ぎ出せますように2016/11/28
くたくた
38
舞台は明治期のヴェネツィア。異国情緒溢れる街に住む日本人とその友の、どこか不思議な雰囲気もあるバディもの。三木笙子さんのお話はどれもブロマンスってほど濃くはない。しかし真情に溢れてる。ヴェネツィアという街の成り立ち、ヴェネツィア出身の冒険家マルコポーロが残した伝説。そういったものを絡めながら、真面目に真っ直ぐに、人のために生きてヴェネツィアで死んだ青年清人と、その友人の誠次郎、イタリア人青年ルカの友情をベースに、物語が進む。事件そのものよりも、それに絡む人の心の物語だ。そして著者の思いも零れる。2024/10/28
マムみかん(*ほぼ一言感想*)
38
日常の謎系ミステリー。 明治時代に日本語講師としてヴェネツィアへ赴任した若者・誠次郎(セイ)が主人公というのに、興味を惹かれました。 国の期待を一身に背負い、生真面目に頑張り過ぎて志半ばで病に倒れた、前任者で幼馴染みの清人(キヨ先生)。 キヨ先生を慕い続けるルカ…。 セイとルカが身の回りの謎を解きながら、ゆっくりと喪失の痛みを癒していく様が良かったです。 生きている人間が変わっていくのは普通のことだし、思い出も美しいまま持ち続ければよいですよね☆2016/08/18