いま哲学に何ができるのか?

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いま哲学に何ができるのか?

  • ISBN:9784799319406

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内容説明

第1章「政策論争は不毛か?」では、すぐれた議論を行う方法を示すための事例として政策論争を取り上げる。ここで示された方法は、ほかの章でも頻繁に使うことになる。
 続く6つの章は、今日の社会でもっとも強大な力といえる、科学、宗教、資本主義をテーマに取り上げる。それぞれについて、関連する哲学的思考のツールを使って批判的に検討していく。ここでの「批判的」というのは、否定的な批判とか、論駁するという意味ではなく、その価値と限界をていねいに評価するという意味だ。
 第2章「科学の取扱説明書」では、科学的主張を評価するときに重要となる、論理的原則に着目する。第3章「科学の限界」では、科学者が関心を寄せる哲学的な問題を取り上げ、そうした問題を論証するにあたり、哲学の知見を用いない場合に生じる問題を紹介する。
 第4章「科学にもとづく無神論」では、さらに高度な哲学的省察に移り、宗教哲学の中心となる論点「神の存在を信じることは理にかなっているか」について、かなりくわしく論じる。ここでは、ある哲学的見解に対するくわしい分析や批評の方法を見ていくことになる。
 第5章「宗教的不可知論」は、宗教的信念は合理的であるという見解を展開し、それを擁護する作業に移る。この章でわたしは自分の見解を述べるが、その目的は、哲学論争の内容を例示するために必要となる哲学的ツールを提供することである。この点はとくに強調しておきたい。
 第6章「幸福、仕事、資本主義」と第7章「資本主義社会における教育」では、幸福の本質、仕事の価値、資本主義の道徳性、教育の目的について論じる。とても難しく思えるテーマかもしれない。ここでの議論では、先ほどあげたテーマがお互いに関連するものであり、すべてを結びつけることでよりよいくらしに必要な見取り図が描けることを示していく。
 続く2つの章は方向性をがらりと変える。どちらの章も、具体的な社会問題に対して、哲学がどのように貢献できるかを示すものだ。第8章「アートの価値とは?」では現代アートの価値を、第9章「人工妊娠中絶は殺人か?」では堕胎の道徳性を取り上げる。この2つの章を読めば、学術的哲学者たちが交わす議論とはどのようなものか、哲学者の専門的知識が、社会問題を議論するなんらかの助けになるかがわかるだろう。
 最後の第10章「哲学にできること」は、哲学の歴史上重要な節目について考え、哲学的思考全体を概観する。そして、20世紀のアメリカ人哲学者ウィリアム・セラーズが提唱した自明な世界像(日常的な客体の世界)と科学的世界像(分子と原子の世界)の区別を用いることで、現代思想における哲学の役割を明確にする。(「序文」より)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

11
図書館の返却期限の関係から速足読みです。非常に内容が厳密に記されており面白いです、議論をする上での考え方というか思想、哲学というのでしょうそういった基本的なことから、普通は明白であるととらえられている科学についても、哲学的なとらえ方になる領域との線引きを厳密に記されています。そのほか宗教、幸福、資本主義など。哲学という分野を各ジャンルで明確にし何が議論されているのか提示しています。半分以上読みこなせていない感じもしますのでまた今度熟読予定です。2016/09/13

kei muramatsu

5
厳密には読み終わってないのだが、ツイッターで水掛け論ばかりやってる人に読んでほしいと思った。議論の目的は、前提と主張の、妥当さを突き詰めていくことだ。1人では難しい正確な理解を共有することだ。誰かの主張を否定し、論破しようとする現代に、必要な考え方が載っている。2023/09/09

Bevel

2
明晰なフーコー研究や20世紀フランス思想史で知られるガッティングだけど、近年、その力は、分析哲学との架橋やニューヨーク・タイムズでのコラムなどに割かれていたらしい。本書では、彼の晩年の仕事の一端が見られて、変わらない明晰さでわれわれを安心させてくれる。哲学の目的としての、最広義な意味でのものごとの関係性に関わる基礎的信念の知的保全(大意)という考え方は、どこか物足りないけれど、以下の追悼記事なんかも読むと、現場の哲学教育者として妙な味があるような気もしてきて、しみじみした。RIP2021/02/27

マウンテンゴリラ

2
確かに、かつて哲学は一般民衆と離れたところにあったし、それを生業とする哲学者の意識の中にも、それを当然のこととし、あえて民衆に近づくことを避けようとするものがあっただろうと想像される。だからといって、それは民衆にとって全く不要のものでもなければ、哲学者自身が民衆を無視し、彼らには無関係または理解し得ないものとして、哲学理論を構築したわけでもないだろう。中にはそのような構えの哲学者もいたかもしれないが、少なくとも現在に至るまで名を知られ、研究対象とされている哲学者には当てはまらないだろう。→(2)2016/11/30

オブ犬

2
一人の哲学者が現代に哲学で何ができるかを色々考えたという感じだが、納得できる部分もあり、納得できない部分もあり。神の存在についての話とかさすがに屁理屈という感じが…。2016/11/25

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