内容説明
池袋の通り魔、音羽の幼女殺人、少女監禁、カレー事件、リストラ、田舎移住、ニュータウンの30年……。世紀末の1年の事件は、21世紀のいまも「現役」。遠くて近い隣人たちのドラマに寄り道しつつ迫ってみると、そこにはあなたとよく似た顔が――。直木賞作家による異色ルポルタージュ。(『隣人』改題)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
422
重松清の珍しいルポルタージュ。2000年に月刊総合誌「現代」に連載されていたもの。コンセプトは「寄り道・無駄足ノンフィクション」。かつて世間を騒がせた12の事件を取り上げている。重松清の作品にしてはレビューが極端に少ない。あまり注目されることがなかった故か、あるいは読者が重松に求めているものと違っていたからか。17歳の起こした事件など、例外はあるが自己との同世代感を強く打ち出してもいる。新潟の少女監禁事件の佐藤、宮崎勤、上祐史浩、林須寿美等がまさにそうだ。それもまた読者を限定した原因であったかもしれない。2021/05/07
シブ吉
102
二十世紀末。月刊「現代」に連載されていた重松清さんの12のルポを再構成した本書は「通り魔」「ヤラセ番組」「監禁」「十七歳」「ヒ素カレー」など、暗いニュースが多かった。しかし、重松清さんは事件の核心に迫るというよりも、その背景に蛇足を付けたいと「寄り道」をしながら書き綴る。『年老いた近未来都市』での、閉店セールの「百貨店」で、在りし日に家族で過ごした日曜日の、ささやかな幸福のひとときを重松清さんが思い入れたっぷりに語る姿や、ニュータウンの話を読みながら、『定年ゴジラ』や、後の作品に通じるモノが有りました。2014/05/25
さっとん
36
小説だと思ったらルポルタージュで、しかも20年近くも前の事件や出来事について書かれた作品ということで思いっきり戸惑いながら読み始めました。 実際、事実をなぞり真相に迫る内容だったらそんなこともあったなぁと思うだけだったかもしれませんが、重松さんの視点で書かれた本作品はとても興味深く読みやすかったです。 ただ、世紀末からは時間が経ち過ぎていて記憶がかなり薄れていた…もっと前に読んでいればもう少し身近に感じられたのかな…2018/02/12
thee birdmen
26
99年から00年にかけて、世を騒がせた事件やブームを重松節で切り取ったルポ。犯罪者、被害者、周囲の人々、現場の環境みんなに寄り添う気持ちと優しさが溢れています。あの頃の自分は大人でも子どもでもない18歳から19歳を生きていて、酒鬼薔薇聖斗やてるくはのるや危険な17歳はどこか他人事でした。押しも押されもせぬ中年になった今読むこの本は、波風のない日常の積み重ねが尊いことだと教えてくれたような気がします。世界を動かす歯車の端っっっこのほうの小さな一つでも、精一杯生きよう。なんて思ってね。甘っちょろいけど。2015/11/07
メルル
24
あの頃はいろんな事件が起こっていた。これがみんな同じ時に起きたことだなんてすっかり忘れていた。報道の激しさを冷静に振り返れば、くだらない野次馬根性と言えるがその時は残虐な事件に釘付けになりみんな何が起きているのか知りたくてたまらなかったのだろう。それによって新たな被害者を作り出していることに気が付きもせず…。重松氏の事件を追う目線はそういう物とは違っていて重松氏らしさに溢れていた。小説を片手に事件を考える手法も興味深かった。読みたい本が増えた。2015/03/14
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