内容説明
三十七歳から初小説『吾輩は猫である』を執筆、以降、満四十九歳で逝去するまでのわずか十余年間に、日本近代文学の礎となる数多の傑作を著した漱石夏目金之助。「修善寺の大患」で垣間見た「死」の後に綴った二随筆は、小説やいわゆる身辺雑記とは別種の妙味を持ち、漱石文学のひとつの極点として異彩を放ち続けている。同時期の著名な演説一篇を併録した、散文芸術の真髄。
目次
思い出す事など
私の個人主義
硝子戸の中
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホシ
20
「硝子戸の中」を再読しました。「思い出す事など」も今、再読中です。両者とも漱石による散文文学の傑作ですが、私は「硝子戸の中」がもっと好きですね。「思い出す事など」は漱石自身によって修善寺の大患が回顧される、とても重要な作品ですが、「硝子戸の中」は何気ない日常に漱石の思いが訥々と語られる作品です。そこに何一つ虚飾を交えない素朴な漱石を見るような気がして、私は気に入ってます。来週、新宿の記念館に行きます。今から楽しみです!2019/01/17
ホシ
11
ああ、素晴らしい。どの三作も秋の夜長にぴったりな散文。『思い出す事など』は”修善寺の大患”で死線を彷徨った漱石が、自らの体験を基に死生観をしみじみと語る。『私の個人主義』は学習院での講演録。特に前半部は生きる事を模索する者の背中を力強く押してくれるに違いない。『硝子戸の中』は漱石の人となりが垣間見られるとともに、生きづらくも愛すべき”人の世”の有り様が静謐に満ちた文章で綴られる。どの散文も心にしみるものばかりで、美文に溢れる一冊。道に迷い、佇んでしまった時に読みたい本を、この世に残した漱石の偉業に感謝。2017/11/02
駒子
2
夏目漱石も確かにこの世に生きていて、死について考えを巡らせていたのだと、当たり前のことに気付いた読書時間でした。その時その時は当たり前に目の前にいた人たちが、ふと気付くと誰もいない。身震いするような寂しさなのでした。2024/10/10
ふみ
1
夏目漱石が犬に「ヘクトー」と名付けてる!かの夏目漱石もイーリアスを知っているし、同じ地続きの東京に住んでいたのが伺えた。彼は活字の中だけの存在ではなく、実在の人物だったのが感じられて新鮮だった。2025/06/19
Tomomi
1
「私の個人主義」が勧められていたので読んだ。大正3年に学習院で講演したもの。個人主義という言葉が曲解されているのは大正3年の頃も同じだったらしい。自己の個性の発展を仕遂げようと思うならば、同時に他人の個性も尊重しなければならない。2019/02/17
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