内容説明
名作「かわいいひと」「いいなずけ」のほか、激しい歯痛に苦しむ元将軍が〈馬のような名字〉に悩まされる表題作や、スラプスティックな喜劇『創立記念日』など、多彩な魅力を詰めこんだ傑作十八篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テツ
22
久々のチェーホフ。ロシアの大地に生きる人々の営み。辛く悲しいことに満たされたそれらも第三者的な視線で眺めたら喜劇として映る。古今東西山ほど創られてきた悲劇と喜劇は表裏一体。物語の中だけではなくきっと現実社会でも。自分が追い詰められているときでも「ああ。これ側から見たら面白いのかもしれないな」と考えられるような強さと思考の余裕があれば生きることってかなり楽になる。2017/12/18
ぺったらぺたら子
17
急に読みたくなり「恐怖」のみ再読。生きる事に醒めてしまうという伝染性の病。罹患すれば、日常は、人々の営みは、世界は、何の意味も必然性も無いただ無意味な運動でしかなく、その中でただ生きる事はもう恐怖以外の何物でもなくなる。生きる事の熱の醒めた人と、熱を持つ(持ちたい)人との温度差として、半端なロマンスへと繋がる所が堪らない程チェーホフなんですよ。「きのうここに帽子を忘れてね・・・・・」という台詞にふと武田百合子『犬が星見た』の中で、チェーホフの家を見学して武田泰淳が帽子を忘れて来てしまう場面を思い出した。2018/09/23
壱萬参仟縁
17
「ロスチャイルドのバイオリン」では、「どうしてこの世の中では、たった一度きりしか与えられない人生が益もなく終わってしまう、そんな奇妙な仕組みになっているのだろう?」(127頁)とある。読書Mがなければ益もないが、このサイトさえあれば、益があるのはユーザーからのナイス、コメントが証明している。「ある往診での出来事」では、家庭教師も一部登場。2014/02/12
ふるい
10
言うまでもありませんが、とても面白く素晴らしい作品集です。表題作「馬のような名字」のドタバタ劇、「小役人の死」のブラックユーモア、「ワーニカ」「ねむい」の虐げられた子供の悲劇、「学生」「ある往診での出来事」の幸福の兆し、「かわいいひと」「いいなずけ」の異なる考え方を持つそれぞれの女性の生き辛さなど、チェーホフ作品の多彩な魅力が詰まっています。2019/11/18
メルキド出版
10
「学生」保坂和志に教えられた短篇。ゴーゴリ、ドストエフスキー、トルストイよりもチェーホフのほうが垢抜けている。そして、ここには宇宙の世界の生命の真理が書かれていた。2018/03/04