内容説明
地球上には、わかっているだけで一九〇万種、実際は数千万種もの生物がいると言われる。しかし、その大半は人間と直接の関わりを持たない。しかし私たちは多様なこの生物を守らなければならない。それはなぜなのか――。熾烈な「軍拡競争」が繰り広げられる熱帯雨林や、栄養のない海に繁栄するサンゴ礁。地球まるごとの生態系システムを平易に解説しながら、リンネ、ダーウィン、メンデルの足跡も辿り直す、異色の生命讃歌。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なかしー
51
とりあえず1回目、生物学の範疇を超え、哲学やら倫理学など学問領域を混ざりあって難しい汗汗。再読します。。。 著者はナマコ研究の教授。 本書がほかの生物多様本と異なる点を挙げると、出版当時に著者は定年を迎えたことにより、所属組織、領域や立場に依拠「せずに」、自分の考えと言葉を語る点ではないかと思います。また、副題である「私」を出発点として考える視点からも、学術分野の本とは一線を画している。 ※学術性を担保するためには、バイアスのない客観的手法を取る必要があり、その際に「私」という主観性を排しているからです。2023/12/12
ころこ
43
文系の多様性という価値が理系との境界を曖昧にし、理系の多様性の議論を侵食しているようにみえます。自然には2種類あり、ひとつは人間が起源としユートピアとする自然で、あるときは人間にとって心地よいものあり、あるときには人間を律する神的なものです。もう一つは人間が表象する以前の自然です。本書は前者を暗黙の前提にしており、要するに人間が自然の中に見たいものを見ることでしかありません。文系の多様性はイデオロギーであり、それ自体の良否はともかく理系の多様性に無自覚に反映させることは社会進化論の裏返しでしかありません。2021/08/08
ローレンツ🐾
36
『なぜ生物多様性を大切にしないといけないのか』から始まり、『生物とは』『多様性とは』『守るべきとは』等を掘り下げ、進化論や遺伝子にまで話が広がる。そのくらい掘り下げても生物多様性を正しく説明するのも理解するのも容易ではない。しかし、そこはさすが本川先生。かなり噛み砕いて本書を書かれている。良書。利己主義な人間たちへのメッセージ。忘れたころにもう一度再読したい。2022/10/05
nekozuki
16
生態学を学ぶつもりだったが、思わぬセレンディピティを得た。まず、「自然科学に対する『なぜ』という問いは、ダーウィンの進化論まで答えることが出来ないものだった」という点。生物学は、自然科学の中でも異色の存在であるのだとわかる。次に「現代の思想は多くが粒子主義に依っている」という点。それ以上分割することが出来ない単位を中心とした観測は物理学によるものなのだろうが、哲学に於いては、本書で挙げられたデカルトよりもライプニッツの「モナド論(モナドロジー)」を想起した。2016/01/04
またの名
14
こまごまして勉強が大変と思われてる生物学の困難を取り除こうと、自ら生きものの曲を作って歌う著者のクセが凄い。しかしふざけた軟派な啓蒙書かと疑うのは拙速。生態系の基本的なメカニズムやダーウィン進化論、メンデル遺伝法則といった生物学のイロハを解説しつつ、生物多様性がどのように理解される観点なのか判り易く示す。「生物は皆掛けがえのない兄弟!全員ちがってるから多様性が欠けちゃダメ!」という感情論では多くの現代人が納得しないことを心得る著者は、哲学や倫理学の書を繙いて表原型としての私の輪郭の拡張という議論に訴える。2018/04/15
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