内容説明
〈西のはて〉を舞台にした、ル=グウィンのファンタジーシリーズ第二作!文字を邪悪なものとする禁書の地で、少女メマーは一族の館に本が隠されていることを知り、当主からひそかに教育を受ける――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
世話役
14
よくわからない、もしくは今ひとつ響かないため感想が湧かない物語には沢山出会ってきたが、このような物語に出会ったのは初めてかもしれない。意味合いはわかるがそれを語る言葉が見つからない。本当は腑に落ちているのに、表面的な理解の部分が追いつかない。納得はしても表面的な言葉の部分での何故が消えない。『ヴォイス』はそんな物語だった。経験上、理屈はわかるが心がついてこないことはよくあったし、それらを冒頭に掲げたものと位置づけてきたのだけど。何にせよ、これが今の僕に語りうる限界なのだろう。ゆえに、そのまま記述しておく。2015/01/13
roughfractus02
12
文字を巡る物語の主人公は、文字を持たず他国の書物を焚書にする国の支配層の兵士に強姦された非支配層の女性から生まれた少女である。彼女は母から秘密の図書館を教えられ、道の長に文字を習い「語り人」の能力に目覚める。道の長は「読む人」であり、少女が語る文字を人々に伝える。シャーマンとなった少女の声に、吟遊詩人となって放浪し低地出身の母から教わった物語を朗唱する前作の主人公の声が重なる(原題は複数形のVoices)。本書に書く人がいないのは、「文字」の書き手が人間を超えた自然の無数の声(集合的無意識)だからだろう。2024/01/12
Ribes triste
6
ギフトの勢いのまま読了。これまた面白かった。シリーズ中一番好きな本でした。2015/12/06
shou
6
他民族の占領下で文字を禁じられた都市、そこで密かに本を守る長老の家。手触りの良いファンタジー世界に酔い痴れつつ、混血の少女の成長を追う。征服者の側が詩や物語を愛する民族だったり、英雄もなく復讐もできない和解を不満に感じたりする描写がさすが。2015/01/12
じゅういちじゅうに
5
前巻ではオレックとグライの淡い恋が物語をつらぬく一本の糸であったけれど、読むことに没頭するメマー(後半で年齢がさりげなく書かれているのを見たときにはかなりびっくりした。その年で少年のふりができるのか……みたいな)が年頃であっても恋愛にほとんど興味を持っていないことが心地よかった。こういうあっさりしたヒロインもいていいんだよなー。「創り人たちはどうして家事や料理を物語から締め出すのだろう」は、名言!2011/07/10