内容説明
没後十年、らもが甦る。中島らもの盟友が狂おしく激しい交友の軌跡を、破滅へ急ぐ著者たちの姿とともに苛烈な美しさで描き出す名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
14
親友が描く、中島らも伝。とはいっても、まるで一筋縄ではない。鈴木創士は、らもとの交流の日々を、まるで文学作品のように、詩的に、叙情的に、苛烈に描いていく。それこそが、親友らもに対する正しき追悼であるかのごとく。にしても、彼らの若かりし頃の日常は、馬鹿馬鹿しさに貫かれながらも、同時に死にも彩られていたことに驚かされる。その残酷な混在こそが、らも文学であり、中島らもその人を構成していたのだろう。2014/06/18
xtc1961ymo
6
中島らもの朋友による、交遊録といえなくもないが、ただ其れだけでなく、文体に工夫をこらし、黙示録や叙事詩のように、不気味な迫力で読ませます。兎に角読んでみて下さいとしか言えません。前半やたらと人が死にます。薬をやりながら酒に溺れかなり飛んでいてそのせいで半ば廃人になりかけ生き急いだんだとわかりますが、周りの家族友人もよくそれを許して面倒をみたなあと本当にたいへんだったのは、本人よりも周りだったと痛感しました。もっとらもさんの小説を読みたくなりました。まことにS氏らしいはなむけの書であります。2014/12/19
袖崎いたる
5
らもは推理小説すなわち因縁話つまり復讐譚は書けない人だった。…これに何か、刺さるものがある。「つまり、理由を見つけようとしないんだよ」「だから多分、彼にとっては「原因」というものはないんだ。いくつかの、無視できない「結果」だけがある。」あゝ沁みた2023/05/05
mao
4
中島らもという人は、複雑で絶妙な立ち位置に立っていた人なのかなと思った。個人的にベーコンが好きなのもあって、ベーコンとらも氏の関連の話は心に残った。君がどんなでもいいんだぜ〜♪という心の在り方はたまらなく素敵だな。死については、私の知らない見方が存在する事を知った。文章は、著者が仏文学者だからか、新鮮で不思議な印象を受けた。多少難解にも思われたので、本棚に置いて適宜再読したいと思う。2014/04/12
Yuho Tanuma
2
中島らもの盟友であった鈴木創士氏が中島らもとの思い出などを語ったもの。 フランス文学の翻訳者でもある鈴木氏の独特な詩的な文体がノイズになるが、ヘルハウスと呼ばれた時代の中島らもの家に居候していた時代のいろんなエピソードが興味深い。 本人や妻の書いた話とは別の生々しいリアリティと切なさがある。2022/09/03