内容説明
二〇一五年のNHK大河ドラマの主人公・文を描いた唯一の小説。松陰の妹として生まれ、玄瑞に嫁した、幕末維新の長州に咲いた可憐な一輪の花の生涯。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
56
大河ドラマ『花燃ゆ』から読むに至りました。主人公は文子でありながら、夫の久坂玄瑞が中心に書かれていたように思います。文子の物語は久坂さん死後から始まったと言ってもいいかもしれません。蛤御門の変での自決までによりわずか2年で終わる結婚生活ですが、数十通にもわたる手紙を心の糧とし、周囲の家族たちの支えもありしっかり生きようとする文子が印象的でした。久坂さんを全てであるように慕っていたからこそ、未亡人となっても強く貞潔を守ろうとしたのですね。文子という人物をもう少し知りたいと思いました。2015/03/07
ひろ
20
吉田松陰の妹であり久坂玄瑞の妻でもある、文を主人公にした物語。多忙な中でも妻を想い手紙を送り続ける久坂玄瑞の誠実さと、学を身につけ夫の仕事を理解しようと努める文の健気さが印象に残る。幕末という激動の時代の中で、兄や夫を立て続けに亡くしてしまうけれど、それでもなお強く生きようとする姿にも胸を打たれた。今年の大河ドラマの主人公がなぜ吉田松陰ではなく妹の文なのかという声はよく耳にするけれど、本書を読んでその意図が分かった気がする。2015/05/10
ちょん
17
文の生き方、杉家の芯のとおった育て方に感銘を受けました。松陰や玄瑞、家族との強い繋がりが後ろ盾になったんですね。2015/11/29
木賊
15
吉田松陰の妹にして久坂玄瑞の妻・文の前半生を描く(半分は久坂の話だが)。度々著者の理論や解説が入るので、教育番組(歴史の解説+再現ドラマ)を文章にしたような雰囲気。大河『花燃ゆ』の関連本だが、途中で違和感があったので解説を先に読んだら、上梓は昭和18年(戦時中!)、出版は翼賛出版協会。つまり大政翼賛会的性質の本という事……?偏見かもしれないが、どうにも素直には読めなかった。杉文を主人公にした小説という点で貴重には違いない。2016/07/27
ちびごん
7
大河ドラマが始まる前に読もうと思っていたけれど延びてしまった。どうしても吉田松陰と久坂玄瑞が中心になってしまい、二人の死後ようやく文子の物語が始まったような気がした。今まで新選組モノばかり読んできたので逆の立場から禁門の変や蛤御門の戦など少し読み解くことができたような気がする。文子という人にもう少し、触れたいと思った。大河ドラマにも期待したい。2015/01/06