内容説明
人食い日本兵の亡霊、「私が産んだの」と乳飲み子を抱くオカマ、奇形児を突き落とした産婆、人間の死体を食い漁る野犬……途上国の地べたに伝わるおぞましい幻想や流言が、貧困地のリアルを露にする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Miyako Hongo
13
アジア、アラブ、アフリカの貧困地や難民キャンプなどにまつわるエピソード集。作ったような話が多いと思うのは、人間というのはそういう物だから、なのかも知れない。□世界の貧困地を巡る筆者の情熱は「人間とは何か」という問いなんじゃないかと思う。迷信や風習の生まれる土壌にある、文明の皮を被らない人間の本質を注意深く堀り出している。ああそりゃそうなるわな、的な納得まで持ってける筆者の食いつきは半端ない。□書物やテレビ映像から落ちてしまう体温とか匂いみたいなものが、装幀に使われてる南国の植物写真にマッチしてていい仕事。2015/05/17
mari
8
「絶対貧困」や「物乞う仏陀」のスピンオフ的な感じ?取材地は同じでも今回は戦争に焦点をあてた内容。2014/04/03
akinbo511
8
東南アジア、中東の各地で暮らす、普通の人たちの日常を目の前で見ているかのように読める。非科学的な流言も、石井さんなりに理由を見つけて締めくくるところが好き。 2014/03/02
えいくろ
1
発展途上国で著者が実際に見聞きした逸話・都市伝説・信仰・噂話から見えてくる戦争の傷跡。この本が扱うテーマは人々が見る幻だが、それは悲しい過去の現実を映し出す鏡だと筆者は語る。 淡々とした文調が現地の景色の輪郭を一層浮き立たせた。好みの文調。同筆者の本も読みたい。2021/04/26
Katsuto Yoshinaga
0
雑誌連載で著者の名前を知り、経歴等を読んで気になっていたので手にとってみた。旧日本兵、食人、性、呪術等々の都市伝説に材をとった途上国や貧困地域のルポ小編といった感じの作品。それぞれの題材を深く詳しく綴っていくと、それぞれで一冊の作品となりそうにも思うのだが、これが著者のスタイルなのだろうか。著者には賛否両論あるようだが、これはこれで現代的というか、新しいルポルタージュの方向性があるようで面白いと感じた。内容も個人的には評価する。最近、貧困に材をとった本がたまたま続いている。ちょっとした暗合体験だ。2014/02/14